重いものほど速く落ちるという思い込み
抵抗の誤解
決めているのは重さと形の釣り合い
よく言われること
重いものほど速く落ちる、と思われています。鉄の球と羽根を同時に離せば鉄が先に着くのは見たとおりですし、重さそのものが速さを決めているという理解は、荷物を取り落としたときの感覚とも合います。だから重い物は危ない、軽い物はゆっくり落ちてくる、と体で覚えてしまいます。
実際はどうか
空気を抜けば羽根も鉄も同時に着きます。差を作っているのは空気の抵抗で、重さと、受ける抵抗の釣り合いが落ちる速さを決めます。同じ大きさと形なら重いほうが速いのは本当ですが、効き方はゆるやかで、重さが四倍でも行き着く速さは二倍ほどです。形が違えば、重さの順は当てになりません。
なぜ広まったか
身の回りで落ちるものは、重さも大きさも形も一緒に変わります。重い物はたいてい小さくて硬いので、重さだけが原因に見えてしまいます。机の高さから落とす程度では差が出るほど時間がないため、思い込みが崩れる場面にも出会いません。長いあいだ信じられてきたのも無理はない話です。
どう言えば正しいか
「重いから速い」ではなく重さのわりに空気へ受け止められにくいから速い、と言います。落ちるものはやがて釣り合って終端速度に近づき、雨粒なら直径一ミリで秒速四メートル、大粒でも秒速九メートルほどで頭打ちです。同じ一枚の紙でも、丸めると落ち方が変わるのはこのためです。
解説動画(海外・英語): Do Heavy Objects Actually Fall Faster Than Light Objects? DEBUNKED/Debunked
同じ形で重さだけ変える: 比べ方を公平にするため、動画はボウリングの球を二つ使います。子ども用の6ポンド(2.7キロ)と競技用の16ポンド(7.3キロ)。大きさも形も同じで落とす高さも低いので、違いは重さだけです。重いほうが先に落ちたがるように見えますが、屋根の高さから離すと二つは同時に着地しました。
重さが打ち消し合う理屈: ニュートンの運動の法則によれば、物は今の運動の状態を変えられまいとする性質を持ち、これを慣性と呼びます。重いほど動かすのに力が要る。一方で万有引力の法則から、質量が大きいほどはたらく重力も強い。増えた重力が増えた慣性をちょうど埋め合わせるので、どちらの球も毎秒9.81メートルずつ速くなります。
羽根が遅いのは空気のせい: では羽根と球ではなぜ差が出るのか。効いているのは空気抵抗で、その大きさは形・表面の質・断面の広さ・速さで決まります。羽根は重さのわりに面積が大きく、細い羽枝が落ちながら乱れとこすれを生むので、球よりずっと強く受け止められます。2014年の真空室の実験では、空気を抜いた部屋で羽根と球が同時に着地しました。
展望台から落とす思考実験: 次はエンパイアステートビルから、同じ大きさと表面のバスケットボールを重さだけ変えて落とします。125ポンドの鋼鉄製は8.9秒で秒速81.89メートルに達して最初に着地。ボウリング球と同じ重さのものは10秒・秒速61.67メートル。ふつうのボールは秒速19.72メートルで終端速度に届き、着くのは20.7秒後でした。
軽いほうが抵抗に食われる: 終端速度に届いていないのに差が出る理由を、動画は力の足し引きで示します。重さ500ニュートンの球に空気抵抗が3ニュートンなら、残る下向きの力は497ニュートンで、減りはわずか0.6パーセント。同じ抵抗でも重さ6ニュートンの球なら残りは3ニュートン、半分に落ちます。加速は前者が毎秒9.75メートル、後者は4.9メートルずつでした。