表面張力は膜が張っているという説明
数と言葉の誤解
膜という材料はなく、引き合う力の現れ
よく言われること
水面には目に見えない薄い膜が張っていて、その上を虫が歩き、コップの縁で水が盛り上がる、という説明です。洗剤を一滴落とすと一気に広がるのは膜が破れたから、膜が丈夫なほど水は高く盛り上がる、という言い方も一緒についてきます。膜という材料が本当にあるものとして語られます。
実際はどうか
膜という別の材料はありません。水の分子どうしが引き合っていて、内側の分子は四方から引かれるのに、表面の分子は内側と横からだけ。そのぶん表面を広げるにはエネルギーが要り、水は面積をなるべく小さくしようとします。面積を増やしたくないというこの性質が、縁に沿った引っぱりとして目に見えているだけです。ゴムの膜と違い、広げても引っぱる強さは変わりません。
なぜ広まったか
「膜」と言えば一目で伝わるからです。実際、水面はゴムの膜によく似た振る舞いをして、押せば戻り、縁で切れずにつながります。教材の絵でも水面は線一本で描かれ、材料としての膜があるように見えます。分かりやすさのために削られたのは分子どうしが引き合う話で、削った側に悪気はなく、戻せば済みます。
どう言えば正しいか
「分子どうしが引き合っていて、表面を広げるのに力が要る」と言い換えます。面積を増やすときの代金と言っても同じ意味になります。水面に立つ虫も膜の上ではなく、はじく脚が水面をへこませ、戻ろうとする面に支えられています。界面活性剤のはたらきも、膜を破るのではなく代金を下げる話です。膜という言葉を使うなら、あくまでたとえだと断ってから使います。
解説動画: 【小学生でも分かる】表面張力とは何か?コップの限界を超えても溢れないのはなんで?【極性】【水素結合】/ざっくり科学ちゃんねる
表面とは相の境目のこと: 科学でいう表面は、液体と気体・固体と気体・液体と固体のように、状態や種類の違う物質どうしの境目を指す。理系では界面と呼ぶほうが馴染む。表面張力はそのうち液体の表面に働く力で、表面を縮めようと引っぱるから表面張力という名前になっている。
水分子のかたよりと水素結合: 水分子は酸素1つと水素2つが折れ曲がった形につながっている。水素2つが酸素を斜めに引っぱる配置なので、一直線に並んでいれば打ち消し合うはずの引き合いが釣り合わず、酸素側が勝ってかたよりが残る。全体では電気的に中性でも、部分的に酸素側と水素側でマイナスとプラスに分かれる。これが極性で、水どうしが引き合う力は分子間力の中でもとくに強い水素結合になる。
表面の分子だけが不安定: 液体の内側(バルク)の分子は四方八方から引かれていて安定している。ところが表面の分子は上に相手の分子がいないぶん引かれ方がかたよって不安定。液体は不安定な分子をできるだけ増やさずに済む形へ落ち着くので、結果として表面積が小さくなる。無重力で浮かぶ水が球になるのも、表面積が最小になる形が球だから。
コップの口からこぼれない理由: 満杯のコップに水分子を12個足すとどうなるかで説明している。こぼれた形にすると、図の上で表面にあたる線の長さは22と数えられる。こぼれずに盛り上がった形なら表面積を小さいままにできるので、限界が来るまではある程度あふれないという理屈になる。