レイノルズ数が大きい=速いという読み違い

数と言葉の誤解

速さだけでは決まらない、三つの量の比

よく言われること

数が大きい流れは速い流れで、小さければ遅い流れ。そう速さと一対一で対応させて読む言い方です。配管や風洞の資料で大きな数を見つければ、そこは勢いよく流れている場所だと受け取り、乱流になるかどうかも速度計さえ見れば見当がつく、という話まで続きます。名前のうしろに数が付くぶん、速さの言い換えのように扱われがちです。

実際はどうか

レイノルズ数は、流れが持つ勢いと、粘りが引き止める力の比です。効くのは速さだけではなく、大きさと粘りを合わせた三つ。だから同じ数のところに、大きくてゆっくりな流れと、小さくて速い流れが並びます。海を渡る流れは遅くても数は大きく、直径1ミリほどの管を通る水は秒速1メートルでも小さいままです。乱流に変わる境目がどこかは、数だけでは言い当てられません。

なぜ広まったか

入門で最初に見せられるのが、蛇口を少しずつひねる場面だからです。そこでは長さも粘りも動かないまま速さだけが変わるので、数の増減が速さの増減そのものに見えます。そのうえ、模型と実物で数をそろえるという肝心の話は後回しにされがちで、三つの量の比という中身が抜け落ち、名前と大小の感覚だけが手元に残りました。

どう言えば正しいか

「流れが持つ勢いと、粘りが引き止める力の比です」と先に言い、そのうえで「速さと大きさが上げ、粘りが下げます」と足します。水の中の微生物は目には速く動いても数はごく小さく、粘りの中をかき分けて進んでいます。数が近ければ流れの形も似るので、小さな模型で実物を測れる。それがこの数を使う理由です。

解説動画(海外・英語): Understanding Laminar and Turbulent Flow/The Efficient Engineer

速さではなく力の比: 1883年にオズボーン・レイノルズが多数の実験から導いた無次元の量。中身は流体の密度・速さ・代表長さと粘度でできていて、言い換えれば流れが持つ勢いと、粘りが引き止める力の比。速さはその中の一因子にすぎず、レイノルズ数の大小をそのまま速度として読むと外れる。

代表長さは流れごとに違う: そこに入れる長さは、扱う流れの種類ごとに決める。動画が挙げるのは円柱なら直径、翼なら翼弦長、管なら管の直径という取り方で、同じ速さの流れでも対象が変われば入れる長さが変わり、値は大きく動く。粘度が違えば値も動くので、速さだけを見ても値は決まらない。

大小が分けるのは層流か乱流か: 使い道は、流れが層流になるか乱流になるかの見分けにある。粘りが勝てば乱れは減衰して層流、慣性が勝てば乱流になる。ただし切り替わる値は流れの種類ごとに違い、実験室の整った条件では乱れの始まりを、もっと大きな値まで遅らせられるという。

血液は流れていても層流: 煙突から出る煙も、高速で走る車の後ろの空気も、たいていは乱流。一方で血管を流れる血液はほとんどが層流で、理由は代表長さも速さも小さいから。これは幸運で、もし乱流だったなら心臓はもっと強く働くことになる、と動画は付け足している。

管の抵抗の増え方も変わる: 同じ管でも、層流のときは圧力の下がり方が速さにそのまま比例し、乱流では速さの2乗に比例したうえで内壁の粗さまで効いてくる。乱流でも壁ぎわには粘りが支配する薄い層が残るが、その厚みは値が大きいほど薄くなるので、粗さの影響が前に出る。