屋根の上の飾り

時代: 安土桃山

魚の胴に龍か虎の頭を載せた、想像上の獣の飾りです。棟の両端で尾を空へ跳ね上げ、二つで一対になって向かい合います。

どんな形か

魚の胴に龍か虎の頭を継いだ姿で、頭を下に、尾を上に向けて棟の端へ据えます。背には鋭い鰭が列になって並び、胴には鱗が刻まれ、尾は大きく反り返ります。大棟の左右に一つずつ、顔を向かい合わせて置くのが決まりで、片方だけということはまずありません。天守のほか、入母屋破風を持つ櫓や門の棟に載ることもあります。長野県の松本城天守、兵庫県の姫路城大天守、愛知県の名古屋城の再建天守で、大きさも反りも違います。

見分けの決め手

頭と尾の向きを見ます。頭が下を向いて口を開き、尾が空へ跳ね上がっていれば鯱です。材は瓦・木・石・金属まであり、木を芯にして金板を張った金鯱もあります。愛知県の名古屋城のものは1945年の空襲で焼け、1958年に大阪の造幣局で二代目が作られて翌年の天守再建に合わせて載りました。現存天守に上がるのは瓦のものが多く、島根県の松江城天守のように木造へ銅板を張った例もあります。

取り違えやすい相手

鴟尾と鬼瓦が近い相手です。鴟尾は同じく大棟の両端に立ちますが、顔も尾も無い左右対称の沓形で、鯱のような胴のねじれがありません。鬼瓦は棟の切れ目を正面から塞ぐ板状で、跳ね上がる尾を持ちません。横向きの生き物に見えたら鯱、正面を向いた面なら鬼瓦、無表情の曲面なら鴟尾と分けます。中国の螭吻を経て鴟尾から変形したという系譜が辞典類で示されており、三つは別物というより一続きの系列として並びます。

どこに立つと見えるか

大棟と直角の向き、天守の正面へ回ります。真横からでは二つが重なって一つに見え、正面寄りに立つと向かい合う一対であることが分かります。長野県の松本城天守は堀の対岸から、兵庫県の姫路城大天守は三の丸の芝生から、千鳥破風の重なりごと棟の全長が入ります。城の飾りとしては安土城天主が古い例とされ、滋賀県の安土城跡のように建物が残らない場所では、出土した瓦から形をたどります。朝夕の低い光では金の面が飛び、輪郭だけが残ります。

読みと表記のゆれ

「しゃち」「しゃちほこ」と読み、「鯱」「鯱鉾」と書かれます。江戸時代の中頃から「しゃちほこ」の呼び方が広がったと辞典類では説明され、それ以前の記録には「しゃち」に当たる表記が見えます。指定説明では部材名として「鯱瓦」と書かれることが多く、金を張ったものは「金鯱」と呼ばれ、「きんしゃち」「きんこ」と読みが分かれます。読みも表記もまだ一つに定まっていません。棟の端へ置く点は鴟尾と同じで、古い記録では書き分けが揺れます。