分析書を見つけて眺める
脱衣所の掲示の項目と配置の見取り図。
温泉分析書は、源泉ごとに作られる正式な書類で、壁に出る掲示はその内容を要約した貼り紙にすぎません。温泉法第14条第1項は、浴用または飲用に温泉を提供する施設に、成分・禁忌症・入浴または飲用上の注意を見やすい場所に掲示するよう定めており、分析書はその文言を組み立てる土台になります(神奈川県温泉地学研究所)。紙全体は大きく三つの枠に分かれているので、壁の前で全部を読み解こうとせず、ロビーの掲示や休憩所で、三つの枠のどこを見ているかを確かめながら読むほうが無理がありません。
紙の上段は、源泉と汲んだ場所を記す欄です。湧出地と採水地に源泉名と湧いた場所の住所が並び、見出しが「源泉名および採水地」に替わっていれば、混ぜた湯や運ばれた湯だと分かります。続く泉温と気温には湧いた瞬間の温度が、湧出量には毎分の量と自然湧出・掘削自噴・動力揚湯のどれかが書かれます。現地で測ったpH値や電気伝導率もこの並びに入り、ラドン含有量は測ったときだけ現れます。この一帯は、湯の出どころと湧く勢いを示す欄です。
中段は、溶けている成分の表です。陽イオンと陰イオンは重さとは別にミリバルという目盛でも並び、神奈川県温泉地学研究所の解説は、陽イオンと陰イオンのミリバルの合計がおおむね釣り合うことを、表が正しく作られているかの目安に挙げています。非解離成分の枠にはメタけい酸が入り、成分を積み上げた溶存物質計と、気体の分まで足した成分総計が表の下に続きます。湯を煮詰めて量る蒸発残留物は離れた欄にあり、その他の微量成分はさらに小さな字で表の下に並びます。重さの列だけを拾っても、どの成分が泉質名を決めているかまでは分かりません。
下段は、源泉の情報と成分の数字から導かれた結論です。泉質名の並び順にしたがって組み立てられた名前が入り、療養泉の基準に届かなかった湯では、同じ位置の見出しが判定の欄に替わります。名前の後ろの括弧には浸透圧・液性・泉温の併記が続き、古い呼び名があれば旧泉質名の併記として添えられます。紙の末尾の分析終了年月日と登録番号は、掲示に出ている分析年月日や登録分析機関の名称と同じ数字です。
三つの枠は、湯の出どころ・溶けている量・結論という順で並んでいるので、初めて読むときは上段から下段へ目を通すだけで、紙全体の骨組みがつかめます。名前の意味や成分の数字を細かく追うのは、場所を覚えたあとで構いません。
