泉質名の最初の読み方

長い泉質名を、前から区切って読む手がかり。

壁に掲示された泉質名は、ナトリウム-塩化物泉のような短い名前もあれば、含よう素-ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物泉のように長く続く名前もあります。長い名前も、前半と後半をつないだだけの形で、前半は成分で決まる泉質名そのもの、後半は括弧に入る三つの区分です。この二つを分けて読むと、一文字ずつ覚えなくても骨組みが見えてきます。講義動画「温泉の科学」(鈴研LABO)は、分析書の泉質名欄をこの二つの固まりに分けて説明しており、初めて壁の掲示を読むときの道しるべになります。

前半は、泉質名の頭書き・泉質名の横棒・中黒で並ぶ副成分の三つの決まりで組み立てられています。まず頭に特殊成分の語が付くかどうかを見ます。付くとすれば酸性・含硫黄・含二酸化炭素・含放射能・含鉄・含よう素のどれかで、この順でしか並びません。次に、溶存物質が1000mg/kg未満なら、特殊成分の頭書きがあるときは単純硫黄泉のように「単純」を添えた形、無いときは単純温泉という名前で終わります。1000mg/kg以上なら陽イオンの主成分・陰イオンの主成分の順で、塩化物泉・硫酸塩泉のような語尾へつながります。同じ区画に二つ目の成分が立つときは、横棒ではなく中黒でつながれます。

後半は、泉質名のあとの括弧に入る三つの区分です。神奈川県温泉地学研究所の解説も、泉温・液性・浸透圧を鉱泉の三つの分類として挙げており、数字の境目は次のとおりです。浸透圧は溶存物質の合計が8g/kg未満なら低張性、8g/kg以上10g/kg未満なら等張性、10g/kg以上なら高張性です。液性は湧出時のpHで、3未満の酸性から8.5以上のアルカリ性まで五段階に分かれます。泉温は源泉の温度で、25℃未満の冷鉱泉から42℃以上の高温泉まで四段階です。括弧の中では浸透圧・液性・泉温の順で並ぶのが通例で、前半が何の成分かを示し、後半がその湯の濃さ・酸性度・温度を示すという役割の違いを知っていれば、読み飛ばさずに済みます。

特殊成分の語も陽イオン・陰イオンの語も立たず、泉質名の欄に名前ではなく「温泉法の温泉に該当する」とだけ書かれた掲示もあります。同研究所の解説は、これを療養泉の基準に届かなかった湯だと説明しており、泉質名が無いからといって温泉法上の温泉でないわけではありません。日本温泉協会の英語の解説も、よう素の頭書きに塩化物泉を重ねた泉質名を例に挙げており、成分が多いほど名前が長くなるという読み方につながります。初めて分析書を見るときは、前半の成分の並びと後半の三区分を分けて拾うところから始めると、長い名前でも迷いません。

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