風呂で楽しむ

湯船・シャワー・排水口での観察と実験。

風呂は、同じ場所で条件を一つずつ変えられる観察の場だ。見る順は、湯を張った直後の湯船から始め、シャワー、湯気、泡と進み、栓を抜く渦を最後に置く。栓抜きは一度始めると止められないので、やり直せるものを先に済ませる。手元に置くのは、温度計と時計と、気づいたことを書く紙の三つでよい。

湯船では、上と下の温度の差を先に探す。手を肘まで差し入れ、底近くと水面近くで感じ方を比べる。温かい水は自然対流で上へ動いて層になり、逆向きの流れが入ると層は崩れる(貯湯タンクの研究・Devore ほか・2013)。追い焚きや足し湯でかき混ぜたあとでは、差は残っていない(湯船の温度のむら)。

次にシャワーを出し、カーテンの裾がどちらへ動くかを見る(シャワーカーテンが内側へ寄る)。湯の勢いを強い側と弱い側の二段で比べ、変えるのは勢いだけにする。湯温を同時に下げると、裾の動きの変化を勢いのせいだと言えなくなる。

湯気の見え方は、空気と面の温度の差で変わる。面の温度が露点を下回ると、空気の中の水蒸気はその面で水になる(住宅の湿気を調べる事業者の解説)。鏡の曇り始める場所と、窓や蛇口の金具に水滴が付く順を比べると、冷たい面から先に濡れることが見える(湯気の立ちのぼり方)。

泡は、消え方を二つに分けて見る。液が下へ抜けていく道と、気体が隣の泡へ移って粒が大きくなる道だ。粒が大きくなるほど液の抜けは速まり、抜け自体は途中から自分で止まる側へ向かう(水の泡の実験・Hilgenfeldt ほか・2001)。泡の粒の大きさと液の量、界面の粘りが、この速さを決める(Saint-Jalmes ほか・2002)。計るのは、湯の面が見えるまでの時間にすると比べやすい(泡が消えていく速さ)。

最後に栓を抜く(栓を抜いたあとの流れ)。渦の向きは、浴槽と排水口の形、そして湯を張ったときに残った流れで決まる。排水口が完全な円でないこと、底のわずかな傾き、流れの途中の出っぱりが、水の向きを中心からそらす(子供の科学・山村紳一郎)。同じ浴槽なら向きはそろいやすく、排水口の真上で一方向にかき回してから抜けば、かき回した向きに渦が立つ。地球の自転の効きは、浴槽の大きさでは形の歪みに負ける。自転だけを取り出す条件は、ほぼ円形で歪みの小さい水槽、中央にある排水口、24時間動かさない水の三つになる(科学の実演を行う団体の解説)。

渦が立ったら、中心と外側を分けて見る(排水口の渦)。中心の近くは粘りが効いて固体のように回り、外側は回転していない流体として振る舞う(Guyon ほか・1981)。水面から排水口へ向かう細い筋では回転が速く、筋の周りでは底の境界層がゆっくりした上向きの流れを作る(Andersen ほか・2003)。くぼみの先に空気の芯ができても、芯は現れ、強まり、弱まり、消えるを繰り返す(Kan ほか・2023)。流れる量が多くて最初の回転が遅いときと、量が少なくて回転が速いときでは、渦の形そのものが別になる(Yukimoto ほか・2009)。

やりがちな失敗は三つある。一つ目は、渦の向きが地球の自転で決まると決め込み、一度の観察で終えることだ。二つ目は、湯の量と栓の開きを同時に変えて、効いた側を一つに絞れなくすることだ。三つ目は、泡の残る湯で渦を見ることだ。白い泡は水面のくぼみを隠すので、泡が消えるまで待つか、泡の立たない水で張り直す。

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出典