流れを見る楽しみの全体像
現象・法則・身近な例が、どうつながるかを一望する。
流れの図鑑は、起きる場所ではなく「何が効いているか」で現象を6つに分けている。丸い棒に流れが当たると、後ろで渦が交互に並んで剥がれていくカルマン渦。動く物の後ろには周りより遅い帯が残り、この帯が持ち去った勢いこそ、物が受ける抗力の正体になる後流。
もう一つの軸は圧力と速さ。流れが速い場所ほど圧力が下がる関係はベルヌーイの効果と呼ばれる。NASAグレン研究センターの教育解説は、物のまわりの速さの分布が決まればベルヌーイの式で圧力の分布が求まり、圧力から力を求める、という計算の順番を示すだけで、速さの違いを圧力の違いの原因だとは述べていない。同じ研究センターの別の解説は、上面の空気が後縁で下面の空気に追いつくために速くなるという等時間通過の説も、対称翼や紙飛行機でも揚力が出ることを根拠に誤りだとしている。
粘りと抵抗は、物の表面近くにできる薄い境界層から出てくる。同じ解説は、流れの勢いと粘りの比が小さければ境界層は整った層流と乱流のうち層流のままで、比が大きければ渦を含む乱流に変わり、層の厚さも同じ比で変わると述べる。
音と衝撃は、速さを音速で割った比(マッハ数)で決まる。マッハ数が1に近づくと密度の変化が速さの変化とほぼ同じ大きさになり、圧縮を無視できなくなる。超音速では密度の変化がマッハ数の2乗ほどに育ち、衝撃波やソニックブームが出る境目になる。
6つの現象はどれも、流れる量が保たれるという考え方の上に立つ。土台は質量保存で、連続の式は、管のどの断面でも単位時間に通る量が等しいという形でそれを言い切り、断面が細くなった分だけ速さが増すと説明する。公開教科書の例では、太さ0.9cmのホースの中の速さが、先のノズルで約13倍に上がる。同じ教科書は、流れが整っているときは流れの筋である流線が互いに交わらず滑らかに並ぶとも述べる。
身の回りの流れを見るときは、まず現象に名前をつけ、どの基本法則が効いているかを後から当てはめる順番にすると迷いにくい。初めてのときにいちばん多い失敗は、一つの法則だけであらゆる現象を説明しようとすることで、圧力と速さの関係も、渦と後流の関係も、どちらか一方だけでは説明し切れない。
