流れに気づく
蛇口・湯気・風など、毎日見ている流れを数える。
「流れ」という言葉を使わなくても、日常はすでに流れでできている。Veritasiumは、乱流が特別な場所ではなく部屋の中の空気・大動脈を流れる血液・地表近くの大気・積雲やまわりの空気にもありふれていると紹介し、整った層流のほうがむしろ特殊な条件でしか起きないと述べている。気づくための最初の一歩は、身の回りで動いているものを「流れている」と見る目を持つことで、それだけで日常の景色は変わってくる。
台所と水まわりは、流れをいちばん見つけやすい場所である。蛇口の水が細くなる現象では落ちる水の筋が下へ行くほど細くなり、排水口に立つ渦では栓を抜いた水が渦を巻きながら沈んでいく。火にかけた鍋では鍋の中の対流が起きて中身が絶えず入れ替わり、静かに置いた味噌汁の表面には味噌汁にできる模様が浮かぶ。コーヒーに落とした一滴のミルクが輪になって沈む様子や、ワイングラスの内側を伝って垂れる涙も、同じ台所の中で見つかる流れだ。
風呂場では、立ちのぼる湯気が途中で乱れて崩れる湯気の立ちのぼり方、放っておくと上と下で温度が分かれる湯船の温度のむら、シャワーの最中にカーテンが内側へ寄ってくるシャワーカーテンが内側へ寄る、栓を抜いたあとに勢いが少しずつ弱まっていく栓を抜いたあとの流れなど、座っているだけで次々に流れへ出会える。
部屋の中では、線香の煙がまっすぐ立ちのぼったのちに崩れる線香の煙が途中で乱れる現象が見つかる。立ちのぼる煙が加速とともに乱れへ変わる様子は、Veritasiumが紹介したろうそくの煙の変化と同じ種類の出来事である。エアコンの冷気が部屋の奥まで届かないエアコンの風が届かない、扇風機の前と後ろで届く距離がまるで違う扇風機の後ろの風、窓を一か所しか開けないと空気がほとんど動かず、換気は2か所開けると通り抜ける風も、部屋の中で確かめられる流れである。
外へ出ると、流れの規模が変わる。駅やビルの角で急に風が強まるビル風、開いた傘が裏返る傘がおちょこになる、電車が近づくあいだに風向きが何度も変わる電車が来るときの風、速く走るほど手ごたえが重くなる自転車の向かい風、晴れた高い空に残る飛行機雲まで、見上げた先にも流れがある。
気づく段階でやることは、名前をつけることや理由を考えることではなく、数えることである。一日のうちにいくつの流れを見つけられたかを数えてみると、見えるようにする方法や手で試す方法へ進むための土台ができる。
