なめらかな流れと乱れた流れ

蛇口の水で、2つの流れ方を見分ける。

蛇口の水は、開き具合を一段ずつ変えるだけで流れ方が入れ替わる。ごく細く開くとしずくが落ち、もう少し開くと透き通った水の柱が立ち、さらに開くと柱が白く濁って音が大きくなる。金野祥久は蛇口を使った解説で、ゆっくり流すあいだは透明だった流れが、少し速くしただけで急に乱れに変わると述べている。変えるのは蛇口の開きだけにして、水の受け方や見る位置は動かさない。

整って進む流れと混ざり合う流れの呼び名が層流と乱流で、見分ける目印は3つある。水の柱の奥が透けて見えること、柱の表面が毛羽立たないこと、流れる音が小さいこと。3つがそろえば層のまま進んでいて、どれかが崩れたら混ざり始めている。速さを一段ずつ上げながら、崩れた目印の数を数えると、切り替わりの途中を見落とさない。

切り替わりを決めているのは速さだけではない。流れが持つ勢いと、粘りが引き止める力の比が目安になり、比は速さ・通る道の太さ・液体の粘りの3つで動く(レイノルズ数)。粘りが勝つあいだは乱れの芽が消され、勢いが勝つと乱れが育つ。同じ蛇口で流れ方が入れ替わるのは、開きを変えると速さが変わり、比が境目をまたぐため。単位を持たない比なので、風洞の小さな模型と実物の飛行機を同じ土俵に載せる使い方もできる。

境目は一本の線ではない。オーストリアの研究所の2人は、管の中の流れを長い時間の数値計算で追い、勢いと粘りの比が2020では乱れがやがて消え、2060以上では乱れが居続けると報告した。境目は2040あたりと見られている。低い比で出た乱れは居座れず、ある点を越えると乱れた部分が広がって消えなくなる。研究室で条件を整えると、乱れの始まりはもっと先まで延ばせる。見分けるときに、どちらとも言い切れない途中の状態が出るのは、この区間に当たる。

起きやすい失敗は、水の筋が細くなったことや、途中でしずくに切れたことを、乱れと取り違えること。落ちる水は重力で速くなり、同じ量を通すために下へ行くほど細くなる(連続の式)。細くなりすぎた筋は、表面張力が形をまとめる力に負けて玉に切れる。切れるかどうかは勢いと表面張力の比が決めていて(ウェーバー数)、整っているか混ざっているかの見分けとは別の話になる。柱の上側が透明なまま、下側だけしずくに変わることもある。

流れ方の見分けがついたら、水が流しの底に当たった先も見る。当たった点から薄くて速い膜が広がり、数センチ先で急に厚くなる円い段差ができる(跳水)。川の堰の下にできる段差と同じ名前で、浅く速い流れと厚くゆっくりした流れの切り替わりに当たる。目安は、流れの速さと水面の波が伝わる速さの比(フルード数)。ただし流しほど薄い膜では、段差の位置を何が決めるかが定まっていない。ケンブリッジ大学のチームは、重力ではなく表面張力と粘りによる損失が効くとし、重力をほぼ無くした環境の実験でも円い段差ができたと報告している。デンマーク工科大学のチームは、表面張力の効き方を見積もりすぎだと述べており、見方は分かれたままだ。

もう1つの失敗は、乱れた流れを損だと決めつけること。金野祥久は、乱流の境界層のほうが壁との摩擦は大きいが、流れが面から剥がれにくいので、丸い物では全体の抵抗が小さくなる場合があると説明している。ゴルフボールのディンプルは、乱れを起こして抵抗を下げる仕掛けに当たる。整った流れと乱れた流れは、どちらが上という関係ではない。見分けたうえで、どちらが欲しいかを場面ごとに決めることになる。

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