見た流れを残す

写真・動画・図と一言で残す方法。

流れは一瞬で形を変え、同じものを二度は見られない。残しておけば、次に似た流れに出会ったときに並べて比べられる。比べるには、見えた形だけでなく、そのときの条件を一緒に書いておく必要がある。NASAグレン研究センターの解説は、風洞の試験と実機で流れの勢いと粘りの比(レイノルズ数)がそろっていれば力の相対的な重みを正しく模擬できるが、値が大きく違えば本当の物理を模擬できず、空気力を読み違えると述べる。低い速さで測った抗力の係数を音速に近い速さへ当てはめるのは完全に誤りだとも書く。条件の違う記録を並べても、同じ流れの話にはならない。

写真を撮るときは、何を目印にしたかを書き添える。NASAグレン研究センターの別の解説は、煙やレーザー用の粒子が流れとまったく同じに動くという仮定の上で自由流を見ていると明かしている。目印が流れに乗り切らなければ、写真に写るのは流れそのものではない。密度の勾配を映すシュリーレンの方法もあり、何を映したかで読み取れることが変わる。食用色素・インクと線香のどちらで見たのかを欠かすと、あとから写真だけを見ても何の記録か分からなくなる。

動く形そのものを残すなら、動画のほうが向いている。スマホ三脚(スロー撮影用)で固定すると背景が基準になり、動いたものだけが動く。画面の中に定規を一緒に写しておけば、あとから長さが読める。渦が剥がれる間隔や旗のはためく回数は、ストップウォッチで区間の時間を取っておくと、コマ送りの数と突き合わせられる。屋外では風速計(アネモメーター)の数字と時刻を添える。同じ場所でも、風は日によって変わる。

写真の撮れない流れもある。そこで効くのが図と一言だ。生物教育の研究者2人は、描くことが学ぶ側と科学者の両方の視覚的な思考を助けるのに、教えられる技能として扱う教員は少ないと指摘し、描くことを授業に組み込む枠組みを示した。矢印で向きと速さを描けば、写真には写らない「自分がどう読んだか」が残る。一言には、見えたことと、分からなかったことを分けて書く。

起きやすい失敗は3つある。条件を書かずに写真だけを溜めること。大きさの基準を入れずに撮り、寸法があとから読めなくなること。「きれいだった」で止めて、何を見たのかが残らないこと。画像に何を添えるかは、研究の現場でも後から整えられてきた。顕微鏡の画像を論文に載せる作法に統一した指針が無く、図が読み取りにくいという問題から、研究者の集まりが、体裁と注記・色の選び方・データの公開・解析の手順の書き方を並べた点検表を作って公開した。残し方をそろえることが、後から比べるための下ごしらえになる。記録が溜まると、自分がどこで取り違えたかを、あとから自分の手で見つけられる。

この節に出てくる図鑑の項目

出典