流れを見えるようにする
色・粉・煙で、流れの筋を見る最初の方法。
水も空気も透明で、流れていてもただ眺めるだけでは筋が見えない。流れを見えるようにする道具はどれも、目印になる色・粒・煙を流れに混ぜ、そこだけを光や色の違いで浮き立たせるという、同じ一つの考え方に立っている。
水では、食用色素・インクを一滴落とすのが最初の一歩になる。ゆっくり流れる管に細く落とすと色の筋は何十cmも糸のまま伸び、速さを増すとある所から急にほどけて全体が濁る。透明ホースや透明な角型の水槽のような透明な器を通して初めて、糸のままの状態とほどけた状態の境目が目で確認できる。管に入れられない川や用水路では、浮き(流れをたどる目印)を落として位置を追う。目印そのものが流れの速さを教える点は、色素も浮きも変わらない。
空気では、線香の煙が一本の筋を見せる。NASAグレン研究センターの解説は、模型の上流へ煙を送り込む方法を風洞の流れ可視化の中でも最も古い手法の一つに数え、翼の前縁を過ぎた煙が渦を巻く様子を写真と動画で示す。同じ研究センターの可視化手法をまとめた解説は、表面に貼ったタフトや表面に塗ったオイルも、流れが面から剥がれる場所(剥離)とそこから流れが戻る場所を知るための道具だとし、剥離は抗力の原因になり、翼では失速の原因にもなると述べている。風見リボン(テルテール)は、このタフトと同じ仕組みの道具である。面全体を見たいときは発煙器(スモークマシン)で煙の面を作ると、物の裏に巻き上がる渦や後ろへ伸びる帯がそのまま形になって見える。
同じ考え方は研究の現場でも使われている。NASAの解説は、自由流をより正確に見る方法として、流れに追従する微粒子へレーザーの光を当てて動きを追う手法を挙げる。JST Channelで紹介された研究発表では、ある研究者が、水中にセルロースなどの微小な粒子を入れ、レーザーの代わりに室内灯程度の明るさのバックライトと円偏光板を使うことで、泳ぐ人の周りにできる渦を広い範囲で浮かび上がらせる光学系を作ったと話している。色素や煙で一本の筋を追う方法と、粒子と光で面全体を浮かび上がらせる方法は、目印を流れに混ぜて光で見せるという同じ一歩の延長線上にある。
筋が見えたら、次は手で条件を変えて見え方の違いを確かめる段に移る。色が糸のまま伸びるか途中でほどけるか、煙が渦を巻くかまっすぐ抜けるか。見えた形の違いを覚えておくと、速さや形を変える次の一歩がそのまま意味を持つようになる。
