山に笠雲がかかると雨風

雲の言い伝え

「山に笠雲がかかると雨風」は、山頂に乗った雲を風がぶつかった跡と見る言い伝えです。

言われていること

海上保安庁 留萌海上保安部は、全国共通のことわざの欄に「山に暈雲(笠雲)がかかれば雨風の前兆」を挙げています。同じ資料は、近づく低気圧や前線に吹き込む気流が高い山に当たって上昇し、含まれていた水蒸気が冷えて雲になる、としくみまで書き添えています。富士山のように独立して高くそびえる山の周りで語られてきた言い方で、雲のかたち図鑑では笠雲の名で扱う形です。

空で実際に起きていること

山にぶつかった湿った空気は斜面に沿って持ち上げられ、上がった高さで露点に達した分が雲になります。山を越えて下りる側では暖まって雲が消えるため、雲は同じ場所に留まって見えても、通り抜ける空気は入れ替わり続けています。気象庁『気象観測の手引き』は「晴れた風の強い日に、山の風下側にできるレンズ雲や波状雲」を地形による雲の例に挙げており、笠雲は分類の上では高積雲のレンズ状、つまりレンズ雲の一つで、厚さはふつう200m以下です。

当たる範囲と外れる条件

当たる側を支えているのは、笠雲ができる条件と、山で風雨が強まる条件が同じという点です。風が強く湿っているほど雲は厚くはっきりし、その原因である低気圧や前線は荒れ方の原因でもあるので、二つが一つの理由から並んで出ます。外れるのは冬型の季節風のように、等圧線の並びが動かないまま同じ風が吹き続けるときで、山の雲は何日も同じ姿で残ります。前後で風向と風速がどう変わったかまで見た記録のほうが確かです。

言い伝えが見ている雲・現象

対象は、山頂に接して帽子のように乗る雲です。取り違えやすいのは風下側へ離れて浮くつるし雲で、こちらは山から距離を置いた空中に停まり、山と雲の間に空が見えます。どちらも山越えの気流が作る波から生まれた同じ仲間で、雲が山に触れているかどうかが呼び名の分かれ目です。海外の気象機関もレンズ雲を山稜の風下に出る雲と説明し、位置の違いは共通します。波の並びが空一面へ広がった形のほうは、波のような雲が出ると雨の受け持ちになります。

出典

  1. 公的機関・英語 WMO 国際雲図帳(世界気象機関) Altocumulus lenticularis
  2. 公的機関・英語 NOAA 米国気象局(NWS) Glossary: Lenticular Cloud