星を見る楽しみの全体像
空の条件・目・道具・知識が、見え方にどう効くかを一望する。
同じ星空でも、見える量を分けるのは腕前ではなく、空の明るさ・目の状態・道具・数字の読み方という四つの条件です。この四つを先に一望しておくと、次の晩にどこを直せばよく見えるかが分かります。
空の明るさを動かす大きな要因は光害と月明かりです。街の光は夜空の明るさを底上げし、天の川のような淡いものを背景へ溶かします。満月前後の夜も同じ働きをします。空の暗さをアマチュア向けに段階で表す物差しでは、最も暗い部類で天の川に濃淡の構造まで見え、最も明るい都心の部類では天の川そのものが消えるとされています(John Bortle、Sky & Telescope誌)。
目そのものも、見る道具の一部です。暗い場所に出たあと目が慣れていく暗順応が進むほど、肉眼の限界等級は深くなります。暗い場所でひとみが開く大きさを示す瞳孔径は年齢とともに縮み、若いときより見える量は減ります。
道具を選ぶときも、このひとみの大きさが鍵です。双眼鏡の対物レンズの口径を倍率で割った射出ひとみ径が瞳孔径より太いと、はみ出した光は目に入りません。口径50mm・7倍(射出ひとみ径7.1mm)の双眼鏡でも、街の明かりでひとみが開かない空では口径35mm・7倍の双眼鏡と同じ見え方になります(ニューヨークの天文同好会)。肉眼は星座や天の川、流星群を広く見るのに向き、双眼鏡は二重星や木星の衛星のように、肉眼より暗い相手まで届くという分担もあります(NASA Skywatching)。
数字の読み方も見え方を左右します。見かけの等級は数字が小さいほど明るい対数の目盛りで、1等級の差はおよそ2.5倍の明るさの差にあたります。この目盛りを知っていれば、図鑑に並ぶ等級の違いが、実際の見やすさの差にどれだけ効くかが読めます。
長く見続けるには、見る道具だけでは足りません。暗順応を保つ赤色ライト、動かずに待つ姿勢を支えるリクライニングチェアや寝ころぶマット、冷えを防ぐ防寒着や使い捨てカイロも、見える量を増やす側の道具です。空の条件・目・数字・道具を一通り知っておけば、次にどの図鑑を開けば見え方が変わるかが、自分で決められるようになります。
