通勤と散歩で見る
歩きながら空を確かめる、短い時間の使い方。
通勤と散歩の空は、立ち止まれる場所で決まる。歩きながら見上げると足元が見えないので、まず行きと帰りの道に、空が開けて見える地点を1〜2か所選ぶ。橋の上、駅のホーム、信号待ちの交差点のように、数十秒だけ足が止まる所がよい。見る場所を先に決めておけば、毎日同じ向きの空を比べられる。同じ道でも朝は東、夕は西に太陽があるので、行きと帰りで見えるものは変わる。
太陽本体を直接見ない。皆既日食の皆既中を除き、保護具なしで太陽を直接見るのは安全ではない(NASA)。普通のサングラスでは暗さが足りない(同)。カメラや双眼鏡、望遠鏡のレンズ越しに明るい太陽を見ると、その場で重い眼の傷になる(同)。網膜の傷は痛みを感じないまま起きるので、まぶしさに耐えられるかは目安にならない(NASA ゴダード宇宙飛行センター)。太陽そのものは建物や街路樹の陰に入れ、見るのはまわりの空にする。
出るものは時刻で分かれる。太陽高度が高いほど地上に届く紫外線は多く、1日では正午ごろ、1年では夏至の前後に最大になる(気象庁)。昼の散歩は日差しが強い時間なので、帽子をかぶり、見上げる時間は短く区切る。光の現象が出る位置も高度で決まり、天頂の近くに虹色の弧が出る環天頂アークは、太陽高度が32度より低いときだけ現れる(WMO 国際雲図帳)。地平線に平行な環水平アークは逆に58度より高いときに限られ、約68度で最も濃くなる(同)。朝夕の通勤では頭の上、昼の散歩では低い空を探す。
色は雲が無くても変わる。空の青は大気の分子が日光を散らすレイリー散乱で生まれ、波長の短い青い光がほかの色より強く散らばる(米国大気研究センターの科学教育センター)。波長400ナノメートルの青は、700ナノメートルの赤のおよそ9倍散らされる(NASA の講義資料)。散乱の量は光が通る大気の長さで変わり、太陽が地平線に近い朝夕は黄や橙、赤といった長い波長まで散って夕焼け・朝焼けの色になる(同センター)。微粒子(エアロゾル)が多いほど散る光は増え、空の色は鮮やかになる(同)。
白っぽくかすむ日は、まず見通しを疑う。乾いた微粒子で視程が10km未満になった状態が煙霧で、湿った微粒子や水滴によるものは、もや(視程1km以上10km未満)と霧(1km未満)に分かれる(気象庁)。遠くのビルや山の輪郭が溶けるように見える日は、雲の名前を決める前に、空全体が白いのか雲が広がっているのかを確かめる。
名前は立ち止まってから決める。薄い雲か厚い雲かは、太陽や月の輪郭がはっきり見えるか、ぼやけた点にしか見えないか、地面に影が出るかで分かれる(WMO 国際雲図帳の見分けの手引き)。粒の並んだ雲は指で測れて、腕を伸ばして小指で塊が隠れればうろこ雲(巻積雲)、人差し指でもはみ出せばひつじ雲(高積雲)になる(ウェザーニュース天気図鑑)。前者は高い所にあって薄く、太陽が透けるので影ができず、後者は低く厚みがあるため影を持つ(同)。雲の白と灰色も影も、日光が雲をどれだけ透るかの手がかりだ。
薄い雲が太陽の近くにあると、縁に色が乗る。日光が雲の粒を回り込む回折で色が分かれたものが彩雲で、太陽のまわりの光の輪(内暈)は上層の氷晶による屈折でできる(気象庁)。高く薄い巻層雲の氷晶を光が通ると、輪の内縁は太陽から約22度の位置に固定され、内側がかすかに赤やオレンジに見えることがある(Tim's Severe Weather の解説)。雨上がりは、水滴での屈折と反射でできる主虹を探す(気象庁)。内側に来るのは屈折率の大きい青系の色で、外に淡く重なる副虹は水滴の中で2回屈折と反射を経るため、内側が赤くなる(サガテレビの気象予報士の解説)。
つまずきやすいのは3つある。1つめは、歩きながら見上げることだ。空を見るのは足が止まっている数十秒に限り、歩く間は足元と車を見る。2つめは、太陽の方へレンズを向けることだ。写真も同じで、太陽を隠してから撮る。3つめは、見ただけで終わることだ。時刻と向き、見えたものの名前を一言だけ残せば、次の日の空と比べられる。
短い時間でも続けられる。朝の散歩は5分から15分で始めればよく、歩く間は考え事をやめて、青空や鳥の声のように、いま目の前にあるものへ注意を向ける(精神科医・樺沢紫苑のチャンネル)。空を見る数十秒は、この時間の中に割り込ませればよい。
この節に出てくる図鑑の項目
出典
- 雲・大気現象・大気光象について
- 太陽高度と紫外線
- 予報用語「氷、霜、霧、雷、日照時間」
- Circumzenithal arc
- Circumhorizontal arc
- Cloud identification guide
- The Appearance of the Sky
- Rayleigh Scattering
- Eclipse Viewing Safety
- Eye Safety During Solar Eclipses
- この雲「うろこ雲?ひつじ雲?」 指1本で見分ける方法
- 虹は本当に7色?世界には8色、2色のところも!?虹と天気の関係も解説【佐賀県】
- How Do 22-Degree Halos Form? The Science of Ice Crystal Optics
- やってはいけない朝散歩ベスト9
