初めてで起きやすい失敗

追いかける・色だけで決める・珍しい鳥と思い込む、の防ぎ方。

初めのころの失敗は、追いかける・色だけで決める・珍しい鳥と思い込むの3つに集まります。どれも、その場で名前を決めたい気持ちが先に出たときに起きます。防ぐ手は、見つけた場所で足を止める、大きさと形から書き取る、身近な候補から当たる、の3つです。名前を決めるのは最後で足ります。

足を止めるほど、見られる時間は長くなります。人と犬が入る湾のシギ類は、人の入らない湾より採食に使う時間が短く、81.3%と86.5%の差がありました(チリの2つの湾を比べた研究, Navedo ほか 2019)。同じ研究は、人の数を10haに1人ほどへ抑えるよう勧めています。雪のねぐらから4日続けて飛ばしたライチョウの1種では、ふんに含まれるストレスホルモンの代謝物が増えました(スイスアルプスの実験, Arlettaz ほか 2007)。どちらも日本の身近な鳥の数字ではありませんが、飛ばせば鳥の食べる時間を削ることは同じです。飛ばれたら同じ個体を追わず、次の1羽を探します。追い立てて飛ばせる行為も、同じ理由で避けます。

色は、同じ個体でも光で変わります。強い日光では灰色の羽が黄色く反射して見えることがあり、日陰では色が正確に出ません(鳥類学者ロジャー・レデラー氏の解説)。写真でも、明るい場所では白飛び、暗い森では黒つぶれが起きて、羽の質感まで残りません(野鳥撮影沼【とむチャンネル】)。真っ黒な鳥と真っ白な鳥は、色から読める点が少なく、目の位置さえ見えにくくなります(同じチャンネル)。キジバトとカワラバトのカワラバトは個体ごとに羽色が違い、ジョウビタキの雌とルリビタキの雌の青と橙は暗いやぶで沈みます。ホシハジロとキンクロハジロのように褐色の雌が重なる組では、同じ群れの雄を先に見て候補を絞ります。色の前に、大きさ・形・いた場所・していた行動を書き取ります。

見慣れない鳥は、まず身近な候補から当たります。英国の普通種を外来種や珍しい種と答える誤りは、評価の控えめな人より、自分を上級者と評価した人のほうが多くなりました(オンラインの写真クイズ, Bouillard ほか 2019・査読前の原稿)。珍しい種を思いついたときは、同じ場所で普通に見られる種を2つ挙げて見比べます。白っぽい個体も別種とは限らず、色の異常にはよくある7つの型が整理されています(野外の記録の混乱を減らすための総説, van Grouw 2021)。白化が現れる率は、幼鳥より成鳥で高くなりました(スペインで夜行性の1種を2016年から2020年まで追った調査, Camacho ほか 2022)。幼鳥と換羽の途中も、図鑑の絵と重ならない姿になります。見たことのない鳥が外来の留鳥ということもあり、ガビチョウの仲間4種とソウシチョウは「定着」と記されています(環境省の特定外来生物等一覧)。梅にとまる緑の鳥はウグイスという説は名前が先に立つ例で、スズメはどこにでもいて減っていないという説は身近さが判断を鈍らせる例です。

決まらなかった日は、決めずに書き残します。外れた同定を混ぜた記録は、分布の推定をずらすことが確かめられています(Costa ほか 2015)。「ヒタキの仲間、尾は未確認」のように見えた範囲で閉じれば、同じ道で確かめ直せます。決めなかった記録は欠けた記録ではなく、次に比べるための足場になります。

この節に出てくる図鑑の項目

出典