見た鳥を書き残す
日付・場所・数・気づいたことの残し方。
鳥を見た記録は、日付・場所・数・気づいたことの4つがそろうと、あとから読み返せる形になります。名前が分からなかった日でも、4つを書いておけば記録として残ります。書くのは現場で、見終わった直後が基本です。1件の記録は1つの日付と1つの地点に収め、日をまたがせません(eBirdの決まり)。歩いた道が長くなる日は、記録を2つに分けるほうが中身が濃くなります。
日付は、同じ鳥がいつ現れたかを後で比べるための軸になります。冬鳥と夏鳥を初めて見た日を全国から集める調査が続いていて(NPO法人バードリサーチ)、ツバメのような季節の鳥では日付そのものが記録の中身になります。時刻も一緒に書いておくと、次にどの時間へ出ればよいかを決められます。朝に歩いた日と夕方に歩いた日を分けて残せば、同じ道でも会える鳥が変わることが見えてきます。
場所は、地名より先に環境の型で書きます。都市公園の芝生と広場・公園の池とお堀・里山の雑木林のどれで見たかを書けば、同じ鳥に次に会える場所の見当がつきます。歩いた時間と距離も残しておくと、記録どうしを比べられます。歩いて記録するなら8kmまで、1か所に留まるなら3時間までが目安で、1時間を超えて同じ場所にいたら記録を分けます(eBirdの決まり)。
数は、数えられるときは正確に、数えきれないときは概数で書きます。いた印だけを残すより、おおよその数のほうが後から使えます。50羽と見た群れが実際には40羽や63羽でも、記録としては十分です(eBirdの数え方の手引き)。大きな群れは、10羽ほどのかたまりを目で作り、群れ全体に何回入るかで見積もります(同じ手引き)。群れを数えるオンラインの練習問題では、人は実際より少なく見積もり、群れが大きいほど誤差が大きくなりました(航空機からの個体数調査の誤差を調べた研究, Davis ほか 2022)。奥行きのある群れほど、見えた数より多いと考えて書き足します。
気づいたことは、行動と声から書きます。地面を歩いていたか、水に潜ったか、鳴きながら飛んだかという一行が、次に同じ鳥を見分ける手がかりになります。見分けられた鳥を全部書く形にしておくと、記録の値打ちが上がります。全部の種を並べた記録と、見つけやすさを左右する条件を一緒に使うと、分布の推定の精度がいちばん上がりました(eBirdの記録を使った研究, Johnston ほか 2021)。田んぼと用水路のように種類が多い場所でも、見えた鳥を落とさずに並べます。
初めのうちに起きやすい失敗は3つあります。家に帰ってからまとめて書くこと。図鑑を見た後の記憶は、実際に見た特徴とすり替わります。自分が見ていない鳥を足すこと。ほかの人の観察や、巣に向けたカメラの映像は、自分の記録には入れません(eBirdの決まり)。巣の場所を細かく書いて、人に見せること。営巣中の鳥や神経質な種では、記録に書く場所をぼかすほうがよいとされます(Badgerland Birding)。林のふちとやぶで巣を見つけた日は、環境の型までを書いて、木の位置は残しません。
1件ずつの記録は、数が増えてから意味を持ちます。住宅地の路地と庭先のような同じ道を月に数回歩いて記録を重ねると、季節で入れ替わる鳥と一年中いる鳥が分かれて見えてきます。15分間に見た鳥の数を数えて報告する市民参加の調査もあり(バードリサーチ)、短い時間の記録でも形がそろえば役に立ちます。まずは1回の散歩で1件を書き切ることから始めます。
この節に出てくる図鑑の項目
出典
- eBird rules and best practices
- How to Count Birds
- Errors in aerial survey count data: Identifying pitfalls and solutions
- Analytical guidelines to increase the value of community science data: An example using eBird data to estimate species distributions
- バードリサーチの活動(市民参加型の鳥類調査)
- 5 Expert Tips for Making Better eBird Checklists
