1998年 アジア通貨危機とLTCM
通貨と債券
年: 1997〜1998年 / 最大下落: 通貨が数分の一に / 回復まで: 数年
1998年アジア通貨危機とLTCMは、米国の大手ヘッジファンドが破綻寸前になった危機です。
起きたこと
1997年7月2日のタイ・バーツの切り下げから、通貨危機がアジアへ広がりました。1998年8月にロシアが通貨を切り下げて債務の支払いを止めると、米国のヘッジファンドLTCMは、8月だけでその価値の44%を失い、破綻寸前になりました。1997年にノーベル経済学賞を受けたショールズとマートンが共同経営者だったファンドです。
下落の大きさ
インドネシアのルピアは対ドルで一時、1997年6月の5分の1の価値になり、バーツと韓国ウォンも半分ほどに下がりました(豪州準備銀行)。LTCMは1997年末に資本1ドルへ約30ドルの債務を抱え、ロシアの危機で投資家が安全で売りやすい資産へ動くと、縮むと見た価格差がほとんどの取引で逆に開きました(連邦準備制度の歴史資料)。
戻るまでにかかった時間
アジアのタイ・インドネシア・韓国には、国際社会が計1180億ドルの融資を用意しました。LTCMは1998年9月23日、ニューヨーク連邦準備銀行の仲介で大手金融機関14社が計36億2500万ドルを出資し、ファンドの90%を引き受けました。連邦準備制度は自らの資金を出していません。残るポジションの大半は売られ、出資額は1999年末までに返されました。
学べること
レバレッジは、価格差が縮むのを待てる時間を奪います。LTCMは短い期間の過去データに頼り、取引も集中していたため、リスクを大きく低く見積もっていました(ジョリオン, 2000)。取引先が個別に限度を設けても、LTCMの活動全体に有効な歯止めはかからず、主な課題は過度なレバレッジの抑え方に残りました(大統領金融市場作業部会, 1999)。
出典
- 公的機関・英語 Michael Fleming, Weiling Liu(Federal Reserve History)(2013) Near Failure of Long-Term Capital Management
- 公的機関・英語 Michael Carson, John Clark(Federal Reserve History)(2013) Asian Financial Crisis
- 公的機関・英語 Morris Goldstein, John Hawkins(Reserve Bank of Australia の Research Discussion Paper 9805)(1998) The Origin of the Asian Financial Turmoil
- 公的機関・英語 President's Working Group on Financial Markets(1999) Hedge Funds, Leverage, and the Lessons of Long-Term Capital Management: Report of the President's Working Group on Financial Markets
- 論文・英語 Philippe Jorion(European Financial Management)(2000) Risk management lessons from Long-Term Capital Management
- 動画・英語 Hamish Hodder The Most Dangerous Hedge Fund in History
- 動画 みずほ証券 公式 【LTCM危機:ドル円相場の歴史】Mizuho Economy & Forex
解説動画: アジア通貨危機-新興国経済崩壊の歴史 Chapter5【VOICEROID解説】/ゆはる【国際情勢解説】
ロシアで何が起きたか: アジア通貨危機から1年後の1998年、ロシア経済は低迷していた。石油・ガス・金属といった天然資源の輸出に依存しているため世界景気の動向に影響されやすく、前年のアジア通貨危機で世界経済が停滞したことがそのまま効いた。政治的な混乱も重なる。
理論が現実に追いつかなかった: 金融工学の理論上30万年に一度しか発生しないはずの出来事が、実際のニューヨーク市場では88年の間に48日間あった——数学者マンデルブロの指摘が紹介される。前提が現実と合っていなかった、ということ。
なぜ理論通りに動かないのか: 無数の人間の思惑が複雑に絡み合っているのが経済だから、理論通りに動かない——この一言が、精緻なモデルを組んだファンドが破綻した理由の要約になっている。
