仕事の範囲を守る

追加の依頼と修正を、条件に戻して扱う。

範囲を守る土台は、受ける時点で作業の中身を文字にしておくことにある。見積もりの出し方で作業を項目ごとに並べ、修正回数を先に決めるの項目にならって直しの回数と数え方を書いておけば、あとから来た依頼が範囲の内か外かをその文面で判断できる。文面が無いと、範囲の線は相手の記憶と自分の記憶の食い違いで決まることになり、どちらも正しさを示せない。

範囲の外の依頼が来たら、断るか値を付けるかのどちらかに戻す。対応はできる、追加の見積もりを出すと返すのが基本の形で、作業そのものは引き受けたまま、無料で足される流れだけを止められる。契約範囲外の追加作業の項目にあるとおり、一件ずつは小さいので、数えずに受け続けると当初の何倍もの時間を同じ報酬で使うことになる。方向そのものを変える作り直しは修正の回数に数えず、新しい依頼として見積もる。通話や雑談で決まったことは、その日のうちに要点を書いて送り返し、進行の記録を残す形にしておく。

法の側からの支えもある。会社員が副業として個人で業務委託を受ける場合も、フリーランス・事業者間取引適正化等法の「フリーランス」に当たる(厚生労働省ほかのリーフレット)。従業員を使う発注者が1か月以上の業務委託をした場合、受ける側に落ち度が無いのに費用を負担せず内容を変えさせたり、やり直させたりすることは禁止行為になる。受け取る前に内容をはっきりさせるよう求めたのに発注者が正当な理由なく明確にせず作業を続けさせた場合や、こちらが提案して了承を得た内容で作ったのに合わないとされた場合は、受ける側の落ち度として扱えない(公正取引委員会・厚生労働省の解釈指針)。だから、指示があいまいなときは明確にしてほしいと文字で求め、提案して了承を得たやりとりも残しておく。デザインや文章のように相手の好みで評価が分かれる成果物は、やり直しの費用の負担割合を十分に協議して決め、発注者がその割合を負担すれば問題にならないとされており、無条件に守られるわけではない。

権利の範囲も作業の範囲に含まれる。成果物の著作権などを譲る、使わせる約束をするなら、その範囲を取引条件の「給付の内容」に明記し、対価を報酬に加える必要がある。書いていないのに、使う目的を超えて権利を無償で譲らせることは、不当な経済上の利益の提供要請に当たる。著作権と納品物の権利と二次利用の項目で、受ける前に決める範囲を確かめておく。

受注前の提案は、この法では守りにくい。法の義務は業務委託をした後の取引に掛かるもので、受注に至らなかった提案書の扱いまでは決めていない。提案の段階で出すのは方向と進め方、見積もりの内訳までにとどめ、仕上がった設計や作り込んだ案は受注が決まってから出す。踏み込んだ情報を先に渡す必要があるなら、秘密保持契約を先に結ぶ。書き方は提案文の書き方にまとめてある。

やりがちな失敗は二つある。一つは範囲を盾のように持ち出して関係を冷やすことで、自分の誤字や作業漏れの直しは回数に数えないのが基本になる。もう一つは、言い出しにくさから黙って受け続けることで、行き着く先が際限のない修正要求になる。合意のないまま作業が増え続けるなら、記録を持ってフリーランスを守る法律の窓口へ相談する。

この節に出てくる図鑑の項目

出典