使う予定のお金を分ける
暮らしの備えと、投資に回すお金を分ける考え方。
使う予定のお金を分ける基準は、金額の大小ではなく「いつ使うか」になる。近い将来に使う分は値動きの影響を受けない場所に置き、当面使う予定のない分だけを投資に回す。この線引きが曖昧だと、相場が下がった局面で、生活費や急な出費のために投資した資産を売らざるを得なくなる。
この備えのお金は、増やすための資金ではなく、不測の出費が来たときに育てている最中の資産へ手を付けずに済ませるための保険にあたる(米国の家計相談番組「The Ramsey Show Highlights」の説明)。目安としてよく挙げられるのは生活費の3〜6か月分で、単身で収入が安定していれば3か月分、片働きの世帯や自営業、収入が変動する仕事なら6か月分というように、暮らしの型で幅を決める考え方がある(同じ分野を扱う米国のチャンネル George Kamel の説明)。
この考え方を裏づける数字もある。運用会社として顧客に投資を続けてもらう立場にあるバンガードは、2024年に自社の確定拠出年金制度の加入者 約2,355人へ、「2,000ドルの急な出費に十分対応できる自信があるか」を尋ねた。「十分に自信がある」と答えた人は、そうでない人に比べて、401(k)の拠出率が2.2ポイント高く、途中の貸付利用が19.2ポイント、生活困窮による引き出しが17.4ポイント、それぞれ少なかった。年収や年齢の影響を除いても、この関係は残っていた。退職後に口座のお金をそのまま現金化してしまった割合も、翌年に離職した約140人に限ってみると43.3ポイント低かった。
日本でも傾向は近い。2025年の全国調査(18〜79歳3万人)では、病気や失業などに備えた生活費を確保していると答えた人は54.9%で、確保していないと答えた人は30.0%、わからないと答えた人は15.1%だった。
置き場所も、使う時期に合わせて分ける。すぐに使う分は普通の預金口座に置き、数年のうちに使う見通しが立つ分だけ定期預金や個人向け国債のように元本が目減りしにくい場所へ移すとよい。社債や外国債券は、貸し先の信用や為替の動きで元本が割れることがあるため、この備えには向かない。個人向け国債も、満期前に売ると市場の価格で取引され、額面を下回ることがある点は覚えておく。
