作者と成立の分かっていないこと
作者は「檀道済」とも「名は伝わらない」とも書かれる。


絵: オトモシリーズ(画像生成で描いた絵)
意味
『三十六計』の作者と成立の年は、確かめられない。維基文庫の総目の頁は、作者を檀道済、時代を南北朝の宋とする。根拠の注は、ニュースサイトの記事二本である。同じ維基文庫の六つの組の頁は、作者を佚名(名が伝わらない)とし、明の作品に分ける。大学図書館の総合目録も、作者を佚名と記す。
名前のもとになった故事
書名の数は、『南斉書』の「檀公三十六策」の語と重なる。檀公は、後の『南史』が檀道済のことだろうと添えた人物である。維基文庫の総目の頁は、この檀道済を作者の欄に挙げる。ところが計に付いた解説(按語)は、檀道済が囲みを抜けた話を他人の例として引く。ずっと後の南宋の話も引く。按語は、檀道済の時代には書けない。
見分け方
解説で作者の名や成立の年が言い切られていたら、根拠の種類を見る。同じ時代の史料か、後の時代の推量か、ニュースの記事か。本文が引く例の時代も手がかりになる。引かれた出来事より前には、その文は書けないからである。
よくある誤解
「古代から伝わる兵書」と受け取られることがある。確かめられるのは、古い史書に「三十六策」の語が在ることまでである。台湾の教育部の辞典は、三十六はもと数の多さを言う語で、後の人が実際の数を揃えたとする。日本の機関が持つ漢籍の総合目録に、この書名は見当たらない。
計名と解語(原文と書き下し)
維基文庫「三十六計」(総目の頁)の頭の記載は「noauthor = 檀道濟」「times = 南北朝·宋」、末尾の札は「南北朝作品」。六つの組の頁の頭の記載は「noauthor = 佚名」、末尾の札は「明朝作品」。第二十一計の按語。「檀道濟被圍、乃命軍士悉甲、身自(白)服乘輿徐出外圍、魏懼有伏、不敢逼、乃歸」(檀道済囲まれ、乃ち軍士に命じて悉く甲せしめ、身は白服して輿に乗り、徐ろに外囲を出づ。魏は伏有るを懼れて敢えて逼らず、乃ち帰る)。第三十六計の按語。「如宋畢再遇與金人對壘、度金兵至者日眾、難與爭鋒」(宋の畢再遇の金人と塁を対するが如き、金兵の至る者の日に衆きを度り、与に鋒を争い難しとす)。CiNii Books の書誌(『中國兵書集成』第40册)は、責任表示を「[佚名撰]」とし、注記で、収めた『三十六計』は抄本(手で写した本)の影印だと記す。
故事と成立の確かさ
維基文庫は底本を記さず、議論の頁の版本・来源の欄も空である。作者の注の記事は根拠にしていない。『中國兵書集成』第40册の書誌は、底本を写本の影印と記す。1941年に写本が見つかり成都で翻刻されたという経緯は、明治大学の加藤徹の頁にあるが、どちらも開けていない。同頁は、明末清初の成立と見る向きがあるが真相は不明とする。国会図書館サーチで題に書名を含む本は、刊年の分かる限り1979年刊が最も古い。成立の年を記す一次の資料は見つからなかった。
出典
- 資料・中国語 維基文庫 三十六計(總說と目錄)
- 資料・中国語 維基文庫 三十六計 勝戰計
- 資料・中国語 維基文庫 三十六計 敵戰計
- 資料・中国語 維基文庫 三十六計 攻戰計
- 資料・中国語 維基文庫 三十六計 混戰計
- 資料・中国語 維基文庫 三十六計 並戰計
- 資料・中国語 維基文庫 三十六計 敗戰計
- 資料・中国語 維基文庫 Talk:三十六計(議論の頁。版本・来源の欄は空)
- 公的機関 CiNii Books(国立情報学研究所) 八阵合变图说 ほか(中國兵書集成 第40册。三十六计を収める)書誌
- 公的機関・中国語 中華民國教育部(2021) 重編國語辭典修訂本「三十六計」
- 公的機関 全國漢籍データベース協議會 全國漢籍データベース(「三十六計」の検索結果)
- 資料 加藤徹(明治大学法学部) 兵法三十六計(補足トリビア)
- 公的機関 国立国会図書館サーチ 三十六计(无谷译注、吉林人民出版社、1979年)書誌
- 資料・中国語 維基文庫(蕭子顯) 南齊書 卷二十六 列傳第六(王敬則伝)
- 資料・中国語 維基文庫(李延壽) 南史 卷四十五(王敬則伝)
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