就農・お金・制度

販売と税・農地・保険・年金・就農支援まで

就農・お金・制度を知る前に

家庭菜園を続けていくと、「採れすぎた野菜を売ってみたい」「もっと広い畑を借りたい」「いずれは仕事にしたい」と、一歩進んだ関心が出てくることがあります。そうなると、税金・農地・保険・年金といった制度が関わってきます。

この章では、家庭菜園の延長でも知っておくと安心な軽めの話から、販売・新規就農まで見据えた本格的な制度までを、段階を追ってやさしく紹介します。制度は年度や地域で変わることが多いので、ここでは仕組みと相談先を中心にまとめています。実際に手続きをするときは、必ず各制度の公式サイトや窓口で最新の内容を確認してください(この章は公式情報をもとにした監修前のまとめです)。

収穫物を売るときの税金

売った利益は課税対象になりうる:直売所やマルシェで収穫物を売ってお金を得た場合、その利益は税金の対象になりえます。かかるのは売上そのものではなく「収入から必要経費を引いた所得」です。国税庁の説明では、農業から生じる所得は「事業所得」に区分されます。

事業所得と雑所得:家庭菜園の延長で規模が小さい場合は「雑所得」として扱われることもあります。どちらになるかは規模・継続性・帳簿の有無などから総合的に判断されます。会社勤めで給与をもらっている人は、給与以外の所得の合計が年20万円を超えると確定申告が必要になるのが原則です(金額基準の最新は公式で確認)。

自家消費も収入に含める:所得を計算するときの総収入には、売った分だけでなく、自分で食べた分(自家消費)や人にあげた分の価額も含めて考える、と国税庁は示しています。

青色申告のメリット:事業として続けるなら、届け出て帳簿をつける青色申告を選べます。最高65万円(簡易な記帳なら10万円)の特別控除、家族への給与を経費にできる、赤字を翌年以降3年間繰り越せる、といった特典があります。後述の収入保険は、この青色申告をしていることが加入の前提です。

種苗法と品種の扱い

登録品種と一般品種:種苗法は新しい品種を保護する法律です。品種は、農林水産省に登録され育成者権のある「登録品種」と、それ以外の在来種・未登録・登録期間満了の「一般品種」に分かれます。一般品種は誰でも自由に育て、種を採って増やせます。

登録品種の自家増殖には許諾が必要:令和2年の改正(令和4年4月施行)で、登録品種を自家増殖(採れた種や株を次の栽培に使うこと)するには育成者権者の許諾が必要になりました。一般品種にはこの制限はありません。

家庭菜園は基本影響なし:自分で食べるための家庭菜園・趣味の利用は影響を受けず、登録品種でも自分の菜園で自由に使えます。ただし、増やした種苗や収穫物を他人に配る・売ると扱いが変わり、無断だと権利侵害になりえます。登録品種かどうかは農林水産省のデータベースや購入時の表示で確認できます。

農地を借りて広げるには

「農地」を借りるには手続きが要る:自宅の庭やプランターと違い、田畑などの「農地」を借りて営農するには、農地法にもとづく許可や届け出など一定の手続きが必要です。誰でも自由に貸し借りできるわけではありません。

まずは市民農園・体験農園から:いきなり農地を借りるより、自治体やJAが用意する市民農園・体験農園を利用するのが手軽な入口です。区画を借りて気軽に土いじりができ、指導付きの体験農園もあります。

相談窓口:農地の貸し借りや就農の相談は、市区町村の農業委員会や農政担当課、農地中間管理機構などが窓口です。要件は自治体で異なるため、事前に確認しましょう。

もしもに備える保険

収入保険:青色申告をしている農業者が対象で、自然災害による不作だけでなく、価格の下落など経営努力では避けられない収入減少を幅広く補償する制度です。その年の収入が過去の実績にもとづく基準を一定割合下回ると、下回った分の一部が補てんされます。運営はNOSAI(農業共済組合)。

農業共済(NOSAI):農作物・家畜・農業用ハウスなどが自然災害で受けた損失を補償する公的保険です。青色申告をしていなくても、すべての農業者が対象。掛金の一部を国が補助します。収入保険とはどちらかを選んで加入します。

労災保険の特別加入:雇われていない農業者も、一定の要件を満たせば労災保険に任意で「特別加入」でき、農作業中のケガや病気に備えられます(特定農作業従事者・指定農業機械作業従事者・中小事業主等の類型)。窓口はNOSAIや労働保険事務組合など。

窓口:収入保険・農業共済の相談は、お住まいの地域のNOSAI(農業共済組合)が窓口です。補償割合や掛金などの最新の数値は公式サイトで確認してください。

老後に備える農業者年金

農業者のための年金:農業者年金は、独立行政法人「農業者年金基金」が運営する、農業者向けの公的な年金です。国民年金に加えて老後に備えるもので、自分で積み立てた保険料と運用益で将来の年金額が決まる積立方式です。

幅広く加入できる:年間60日以上農業に従事する国民年金の第1号被保険者などが対象で、経営者だけでなく配偶者や後継者などの家族も加入できます。

保険料の優遇:支払った保険料は社会保険料控除の対象になり、認定農業者など一定の要件を満たす人には保険料の国庫補助(政策支援)もあります。金額や要件の最新は公式で確認を。窓口は農業委員会・JA・農業者年金基金です。

本格的に就農するなら

新規就農者育成総合対策:新しく農業を始める人を後押しする農林水産省の支援策の総称です。生活面を支える「就農準備資金」「経営開始資金」のほか、初期投資への補助などのメニューがあります。

就農準備資金と経営開始資金:就農準備資金は農業大学校や先進農家などで研修を受ける準備段階の人向け、経営開始資金は独立して農業経営を始めた人が経営の安定するまでを支える資金です。いずれも「原則49歳以下(就農予定時)」といった年齢の考え方があります。

窓口と相談先:交付の窓口は市町村・都道府県で、申請の前に事前相談が必要です。相談の入口として、市区町村の農政担当課、都道府県の農業窓口、ポータルサイト「農業をはじめる.JP」(全国新規就農相談センター)があります。金額・年齢・要件は年度で変わるため最新は公式で確認を。

相談先と出典(要確認)

おもな相談先:

・税金 … 税務署/国税庁

・農地・就農 … 市区町村の農業委員会・農政担当課/「農業をはじめる.JP」(全国新規就農相談センター)

・保険(収入保険・農業共済)… 地域のNOSAI(農業共済組合)

・年金 … 農業者年金基金/農業委員会・JA

・支援策 … 農林水産省/都道府県・市町村

この章は、農林水産省・国税庁・全国農業共済組合連合会(NOSAI)・農業者年金基金などの公式情報をもとにまとめた監修前の内容です。制度の金額・割合・年齢・要件などは改正や地域差で変わることがあります。実際の手続きの前に、必ず各制度の公式サイトや窓口で最新の情報を確認してください。