あとについて言う

手本の少しあとを追って言う練習。

シャドーイングは、聞こえてくる英語を、少し遅れて追いかけながら声に出す練習です。もとは同時通訳の訓練で、1990年代に日本の英語教育に入りました(Hamada 2021)。似た練習のリピートは、区切りごとに音声を止めて言い直すので、意味を考える余裕があります。シャドーイングは音声を止めないので、注意が入ってくる音だけに向きます。始める前に、目的を「聞き取りを伸ばす」と「発音を似せる」のどちらかに決めます。目的によって手順も、どこまで正確に言うかも変わります。

聞き取りが目的なら、教材は内容を一度理解した文か、易しい文を選びます。手順は7段です。台本を見ずに小声でつぶやくように1〜2回追い、次に台本を見ながら追い、数分かけて追えなかった所を台本で確かめます。そのあと台本を外して音だけに集中して2回追い、自信の無い所をもう一度台本で見直し、ICレコーダーで自分の声を録って聞き返します(Hamada 2021)。同じ台本で追うのは合わせて5回ほどにとどめます。それ以上は伸びが頭打ちになります(同)。追えなかった所を台本で確かめる段では、そこが子音 + 母音のリンキング・弱形(機能語が弱くなる)・短縮形のどの型に当たるかを書き込むと、崩れて聞こえた理由が分かります。

発音が目的なら、手本をできるだけ正確に真似ます。1分ほど(約250語)の手本を選び、台本をローマ字と発音記号の2段で書き起こし、日本語話者がつまずきやすい音に印を付けます。印を付ける音は、/l/と/r/、/f/と/v/、/θ/、/æ/と/ʌ/、/ə/などです。英語の台本→発音記号の台本→台本なしの順に移り、途中で録音を人に聞いてもらって直します(Hamada 2021)。発音のためのシャドーイングは、音を聞き取る力がある程度ついてから始めます。早すぎると、聞くことと似せることの両方に頭が追いつきません。

続けた結果の目安があります。短い会話を8週間、週4回以上・1回10分以上シャドーイングして録音した学習者16人は、即興で話した英語の分かりやすさと流暢さが、22人の英語話者の評価で有意に上がりました。一方、訛りの強さの評価は変わりませんでした(Foote・McDonough 2017)。44件の研究をまとめた系統的レビューでも、分かりやすさ・聞き取られやすさ・訛りの強さ・流暢さ・抑揚には効果が見られた一方、1つ1つの音の正確さへの効果ははっきりしませんでした(Whitworth・Rose 2025)。個々の音の出し分けは、似た音を対で練習する方法で別に固めます。

やりがちな失敗は3つあります。1つ目は、リピートと取り違えて区切りごとに止めてしまうこと。2つ目は、難しすぎる素材を選ぶこと。3つ目は、全部を正確に言えないと失敗だと思うことです。聞き取りのためのシャドーイングは、完全に言えることを求めない練習です(Hamada 2021)。手本は有線イヤホン(カナル型)で聞き、自分の声だけをICレコーダーで録ると、録音に手本の音が混ざらず、自分の声だけを聞き返せます。

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