聞き取りを良くしたい

聞こえない原因を、音のつながりから探す。

聞き取れない原因は、大きく2つに分かれます。1つは、語の音そのものを知らないこと。もう1つは、知っている語がつながって崩れ、語の切れ目が分からなくなることです。日本の大学生130人を調べた研究では、よく使う1,000語を耳で聞いて分かる力と、続いた音声から語の切れ目を見つける力の2つで、TOEIC の聞き取りの得点のばらつきの34%を説明できました(Lange・Matthews 2020)。最初に決めるのは、自分がどちらでつまずいているかです。聞き取れなかった1文を書き取り、台本と見比べます。台本で見ても分からない語なら語彙の不足、見れば知っている語なら音のつながりの問題です。

音のつながりで崩れるときは、崩れ方の型を覚えます。子音 + 母音のリンキングでは、語末の子音が次の語の母音に付き、an apple が1語のように聞こえます。弱形(機能語が弱くなる)では to・for・and のような文法のための語が短くあいまいな音になり、短縮形では I will が I'll にまとまります。アメリカ英語では、母音にはさまれた t が舌先で軽く弾く音になる/t/ のフラップ化も加わります。台本と見比べて外した所に、どの型が当たるかを書き込みます。型を学ぶ効果は、中級の手前の学習者で大きく出ています。下中級と中級の学習者を比べた研究では、つながる音と抑揚を含む聞き取りの基礎を教えた講座で下中級の学習者のほうが伸び、中級の学習者には聞き方の方略を学ぶほうが役立ちました(Yeldham 2021)。

型が分かったら、同じ音声を少し遅れて追いかけて言う練習(シャドーイング)に移ります。日本の大学生43人が9回の授業で続けた研究では、音を聞き分ける力は習熟度の高い群・低い群の両方で伸び、聞き取りの試験の得点が上がったのは習熟度の低い群だけでした(Hamada 2016)。素材は、内容を一度理解した文か易しい文にします。初めて読む難しい文では、意味を追うのに手一杯になり、音に注意が向きません(Hamada 2021)。

聞く力は、話す力にもつながります。英語の /r/ と /l/ を聞き分ける訓練だけを受けた日本語話者の成人は、発音の練習をしていないのに、訓練のあとの発音のほうが英語の母語話者に正しく聞き取られました(Bradlow ら 1997)。L と R の混同のように聞き分けられない対は、口で直す前に、耳で区別できるようにします。

字幕を使うなら、全文の字幕より、崩れて聞こえる語だけに注釈を付けた字幕のほうが向きます。大学生44人を3つの群に分けた研究では、キーワードに注釈を付けた字幕の群が、縮約された形の聞き取りで、全文字幕とキーワードだけの字幕の群を上回りました(Yang・Chang 2013)。弱くなった子音を拾うには、有線イヤホン(カナル型)か密閉型ヘッドホンで外の音を遮ります。やりがちな失敗は、速くて難しい素材を聞き流して量だけを積むことと、全文の字幕を出したまま文字で内容を追うことです。どちらも、耳が音の型をつかむ前に意味の処理へ注意が逃げます。

この節に出てくる図鑑の項目

出典