文字の名前と音の違い

アルファベットの名前と、語の中での音を分ける。

アルファベットの歌で覚える「エー・ビー・シー…」は、文字の名前です。語の中で文字が表す音は、名前とは別物です。子ども向け教材 Rock 'N Learn の ABC Phonics Song は、文字を名前で呼ばず、絵の単語と一緒に音だけを3回繰り返す形で教えます(A, apple, a-a-apple)。

文字の音の知識は、読む力に直結します。Claytonらの2019年の研究は、小学校に入ったばかりのイギリスの子どもを1年間追い、文字と音の対応・音素への意識・単語を速く言う力を測りました。文字と音の対応そのものが身についたかどうかは、その後1年の読みの伸びを予測しませんでした。予測したのは、文字の音の知識・音素への意識・単語を速く言う力の3つで、それぞれ独立に効きました。

文字の名前が、音の学習を邪魔することもあります。Treimanらの1994年の研究は、就学前児や幼稚園の年長児に、絵の名前の最初の音に合う文字を選ばせました。一部の子どもは、語頭の/w/の音を、名前が「ワイ」で/w/から始まる文字y(3つの読み方)で書く間違いを重ね、別の教え方をしたあともこの思い込みを言い続けた子がいたと著者らは報告しています。

母音の文字はとくに、名前と音がかけ離れています。aの名前は「エイ」、eは「イー」、iは「アイ」、oは「オウ」、uは「ユー」で、どれも長母音の音です。a / e / i / o / u(短母音)で最初に教える読み方は、catの/æ/、bedの/ɛ/、sitの/ɪ/、hotの/ɑː/か/ɒ/、cupの/ʌ/という、名前とは別の短母音です。catを読むときに名前の「エイ」を当てはめると読めないので、母音は名前を忘れ、短い音から練習します。

cとgも、名前が一方の読みにしか似ていません。cの名前「シー」はc(2つの読み)のうち/s/の読み(city)に近い音で始まりますが、基本の読みは/k/(cat)で名前とは離れています。gの名前「ジー」も同じ形で、g(2つの読み)のうち/dʒ/の読み(giant)に近く、基本の/g/(go)とは別です。

quは、名前と音の結びつきがさらに遠い組です。quは2文字で1つの音/kw/になり、名前の「キュー」からは読み方を想像しにくいからです。Rock 'N Learnの「Name That Letter」という動画は、文を聞いて最初の音に合う文字を当てるゲームの中で、qの回だけ「qのあとには必ずuが来て、2つ合わせてクウと読む」と説明を加えています。文字の名前と、語の中の音を覚えるのは別の力だと分けて練習すると、読み始めのつまずきを減らせます。

この節に出てくる図鑑の項目

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