丸ごと覚える語を知る
決まりどおりに読めない、よく出る語の扱い。
音をつないで読む練習を始めると、決まりどおりに読めない語にすぐぶつかります。the・of・toのような語は、文字と音の対応を当てはめても正しい音になりません。しかも、どれも文章の中で何度も出てきます。アメリカの基礎読本4シリーズの語を数えたノーザンイリノイ大学のJerry L. Johnsの報告(1976年)では、Dolchの基本語リストに載る語が、調べたすべての本で語数の50%を超えました。覚える語の数は少なくても、読む量に対する効き目が大きい部分です。
最初に手を付けるのは、文の骨組みになる語です。a / an・you・is・are・they・there・their / they're・hereは、どの文章にも繰り返し出ます。イングランドの国の教育課程(英国教育省、2014年)は、この種の語を「頻出の例外語」と呼び、小学1年で読む対象に入れ、2年の終わりには you・could・many・people のような語を確実に読める状態にすると定めています。教える語の数と順序は使う教材によって変わる、とも書いています。
覚え方は、語の形を丸暗記するのではなく、規則どおりの部分と外れている部分を分けるところから始めます。英国の教育課程は、つづりと音の対応のうち変わっているものに気づかせ、変わった対応が語のどこで起きるかにも注意させるよう求めています。youなら、頭のyは規則どおりの音で、外れているのはouの読みだけです。外れた所が1か所と分かれば、覚える負担もその1か所に絞れます。
丸ごと覚える語も、見た目の形を写真のように覚えるわけではありません。EhriはScientific Studies of Reading誌の論文で、つづり・発音・意味を文字と音の対応で結びつける過程を通して、語が見た瞬間に分かる語になると整理しています。音への意識と文字と音の知識も、この過程を通して育つと述べています。新しい語を声に出して読ませる指導が同じ過程を働かせるとも書いており、音を1つずつ確かめながら声に出す練習は、決まりどおりに読めない語にも効きます。
やりがちな失敗は、音を当てはめて出た形が覚えている音と違ったときに、そこで止めてしまうことです。Steacyらの2019年の研究は、定型発達の子どもと読みの困難のリスクがある子どもを対象に、不規則な語の読みを語ごとに分けて予測する要因を調べました。予測したのは、全般の単語を読む力、解読した形と記憶にある発音のずれを埋める力、語の頻度、つづりと発音の対応の分かりやすさの評価でした。読んだ音から近い語を探し当てる動きそのものが、不規則な語を読む力の一部だということです。
もう一つの失敗は、覚えた音を文の中でも強いまま読むことです。Martin Weisserの機能語の表(Roachの教科書に基づく)は、theに/ðiː/と/ðə/、toに/tuː/と/tə/、areに/ɑː/と/ə/という強い形と弱い形を並べています。弱い形は、文末や、対比して強調するときには出にくいとも書かれています。1語ずつ覚えるときの音は強い形なので、文に入れると弱くなることを先に知っておくと、聞き取りでつまずきにくくなります。
この節に出てくる図鑑の項目
出典
- National curriculum in England: English programmes of study
- Orthographic Mapping in the Acquisition of Sight Word Reading, Spelling Memory, and Vocabulary Learning
- The Role of Set for Variability in Irregular Word Reading: Word and Child Predictors in Typically Developing Readers and Students At-Risk for Reading Disabilities
- Basic Readers and Basic Words
- Strong & Weak Forms
