水の使用量が土耕の98%減る?

節水と資源の説

判定: 測った資料が見当たらない

この数字に、測った条件が付いていません。NASA の記事に載っていますが、値そのものは装置を売る会社が示したもので、作物も期間も比較の相手も書かれていません。

言われていること

NASA Spinoff 2006 の記事に「水の使用量を98パーセント、肥料を60パーセント、農薬を100パーセント減らせる」という一文があり、日本語の紹介や装置の案内はここを出どころにして引き写してきました。98という数字だけが独り歩きし、何と比べた値なのかは付いていません。収量が45〜75%増える?も同じ記事の同じ段落から出ています。

誰が、何を、どう測ったか

示したのは NASA ではなく、噴霧の装置を作っている会社です。記事はその会社の主張としてこの一文を載せていて、作物・栽培期間・株数・比べた相手はどれも書かれていません。同じ記事には NASA の SBIR による別の値として1m²あたりの乾物重が80パーセント増えたという記述があり、水耕と土耕の両方と比べたと添えてあります。こちらは比べた相手が一段だけ書かれています。

測るとどうか

噴霧だけを取り出して削減率を測った公開データは見当たりません。近いのは Regmi ら 2024(Technology in Horticulture、集めて並べたレビュー論文)で、水耕全般について系と作物によっては水を9割超減らせると条件を付けて書いています。9割超と98パーセントは同じ意味の数字ではありません。測り方ごとの幅は畑で作るより少ない水で済む?に置きました。

どう言えば正しいか

比べた相手と、何あたりの水かを書いてから削減率を言います。露地が相手か、かけ流しの温室か、循環する水耕かで桁ごと動き、収穫物1kgあたりか面積1m²あたりかでも変わります。98パーセントは測定値ではなく、条件の書かれていない主張です。自分の装置なら水の収支で出入りを数えるほうが早く分かります。

解説動画: Why Vertical Farming Won't Save the Planet/Utah State University Extension

並んでいる主張: 動画はまず、垂直農法を進める会社が掲げている文句を並べます。畑の0.1パーセントの水と土地と肥料で足りる、二酸化炭素は実質ゼロ、温室より電気が少なく水は70パーセント少ない。話し手は宇宙の閉鎖環境の研究に長く関わってきた立場から、この言い分が成り立つのかを一つずつ確かめると切り出します。

太陽の分け前: 続けて、農業に入ってくるエネルギーの図を見せます。化石燃料もかんがいの水も大きいものの、日射として入る量はそれらを大きく上回る。畑の作物が日射を2から5パーセントしか使えていないことも、模型と計算で学生に教えていると述べ、屋内ではその無償の光を電気で置き換えることになる、と話を進めます。

太陽電池で置き換える: 太陽電池で照明をまかなう案を数字で追います。晴天の正午に光合成へ効く光は1平方メートルあたり毎秒2000マイクロモル、温室を通せば1400。太陽電池の実装効率はよくて15パーセント、そこから最も効率のよいLEDを通すと株に届くのは260にとどまり、1エーカーぶんの光に5.4エーカーの太陽電池が要ると述べます。

光と重さの比: 次に、光の粒がどれだけ食べ物になるかを置きます。よく育ったレタスで光1モルにつき乾いた重さ1グラム、食べる部分はその半分です。吸収は9割、夜の呼吸で残るのが65パーセント、収穫できる割合が85パーセントと、どれも高めに見積もった末の値だと断り、トマトではさらに下がると述べます。

この説にとって: 話し手は、屋内でやっていけるかどうかを疑っているのではなく、これで世界を救えるという言い方のほうを疑っていると述べます。掲げられた数字が何を相手に測ったものかは、この講演では会社の側から示されていません。同じ数字を別の角度から見た話は畑で作るより少ない水で済む?に置いてあります。