水が減るぶん電気を多く使う?
コストと規模の説
判定: 条件によって変わる
水と電気は、片方が減ると片方が増えます。露地と比べた計算では1kgあたりの電気が大きく増え、方式ごとに測ると、電気あたりの成績と水あたりの成績は順位が違いました。
言われていること
「水は減っても電気を食う」「ポンプを止められないぶん、露地よりずっと電気がかかる」という言い方が、紹介記事でくり返されます。ここでの電気には霧を作る動力と、空調や照明がまとめて入っていて、どれがどれだけを占めるかは書かれません。畑で作るより少ない水で済む?と裏返しの関係にある説ですが、比べる相手が露地か水耕かも示されないままです。
誰が、何を、どう測ったか
Barbosa ら 2015(Int. J. Environ. Res. Public Health 12(6):6879)は、米アリゾナ州ユマのレタスで、公開値を積み上げた工学計算により水耕と露地を比べました。圃場の実測ではありません。同じ試験で水・電気・面積の効率を並べたのが Hutchinson ら 2025(HortScience 60(4):601)で、温室で28日、ルッコラとレタスを4方式で比べています。
測るとどうか
Barbosa ら 2015 の計算では、1年・収穫1kgあたりの水が20±3.8 L 対 250±25 L、電気が90,000±11,000 kJ 対 1,100±75 kJで、電気は82±11倍でした。内訳は冷暖房74,000 kJ、補光15,000 kJに対し、循環ポンプは640±120 kJです。Hutchinson ら 2025 では順位が作物で入れ替わり、同じ方式でも電気あたりだけが落ちました。
どう言えば正しいか
照明と空調を入れた数字か、動力だけの数字かを分けて読みます。82倍は屋内で光と温度を作る前提の値で、噴霧そのものの取り分は全体の1%に届きません。加圧に要る電力と熱と除湿の負担は桁が違い、水が減ったぶんが電気に化けたのではなく、閉じた部屋を保つ電気が別に乗っている、という形の説です。
解説動画: RESOURCE USE EFFICIENT CONTROLLED ENVIRONMENT AGRICULTURE/Posgrado IAUIA
効率の測りかた: 動画は、栽培を出てきた収量と、入れた資源の比で見るべきだと述べます。入れる側に並ぶのはエネルギー・水・二酸化炭素・肥料・人手で、収量だけを見ないのがこの研究室の立場です。閉じた施設では排液を処理して回せるうえ、空気中の水分も回収して使い直せると説明しています。
電気の行き先: 一方で垂直型の施設は電気を多く使うと述べます。使い道として挙がるのは照明と、冷房および除湿の電気です。研究室はこの2つを減らすために、光の強さ・二酸化炭素の施用・温度と湿度・株の密度をまとめて決める課題に取り組んでいると紹介します。米国農務省の資金で、複数の州にまたがる事業だと述べます。
光と二酸化炭素: 光を強めるほど収量は増えますが、電気もそのぶん要ります。動画は電気あたりの収穫量で見ると値がよく似てくることを示し、二酸化炭素を500から1100ppmへ上げれば日積算光量を13から11へ落としても同じ収量に届く、という計算例を挙げます。弱い光で作る選び方が出てくる、という話です。
場所で入れ替わる: 施設の型の優劣も、置く場所で変わると述べます。リヤドやアブダビ、マイアミ、フェニックス、シアトルを含む6か所を比べたところ、光の強い地域では温室のほうが電気あたりの効率が高く、光の乏しい寒冷地では垂直型と温室がほぼ同じになりました。どちらが有利かは置く場所で決まる、というのが結論です。
この説にとって: 動画は、多段に積んだ栽培空間は環境が一様にならないことも課題に挙げ、株のまわりの風速の帯にあたる送風の設計を数値流体力学で調べたと述べます。照明の間から下向きに風を送り、蒸散を促してレタスの葉先の枯れを抑える狙いです。ここで数えられている電気は照明と冷房・除湿で、水の使用量との差し引きは語られません。