上達の段階
しくみを知る・自分の決まりを持つ・数字で確かめる、の順番。
上達は、しくみを知る・自分の決まりを持つ・数字で確かめる、の3段で進む。どの段で何に時間を使うかは、知識の量より手元の資産の大きさで変わる。米国の投資の解説者ハンフリー・ヤンは、投資に回した額を1年の生活費で割った倍率で段階を分け、段階ごとに効く手が1つに絞れると説明する(YouTube)。
しくみを知る段では、商品ごとに損の出どころを押さえる。現物株式、インデックスファンド、個人向け国債、J-REIT(不動産投資信託)、FX(外国為替証拠金取引)、変額保険は、値動きの源もかかる費用も別々だ。金利の高い借入が残っているなら、返すことが値動きの無い確実な収益になる。資産が生活費の1年分に届くまでは、運用の成績より積み立てる額のほうが結果を大きく動かす(ヤン)。この段の技術は、信託報酬と実質コストを読めることだ。
自分の決まりを持つ段では、配分と積み立ての額を書き、記事や動画を見るたびに中身を乗り換えない。乗り換えるたびに積み上げが途切れ、課税口座なら税もかかる(ヤン)。資産が生活費の数年分に増えると、やることの少ない退屈な時期が続き、信用取引や個別株の売買に手を広げたくなる。米国の約6万6千世帯の証券口座では、最も頻繁に売買した層の年率の収益は11.4%で、市場の17.9%を下回った(Barber と Odean、2000年の論文)。資産が大きいほど、同じ30%の下落で失う額は生活費の何年分にもなる。最大ドローダウンで過去の下げ幅を知っておくと、下げの中で売らずに済む。
数字で確かめる段では、商品の外側の数字を読む。PER(株価収益率)とROE(自己資本利益率)で会社の値段と中身を、標準偏差(リスク)で値動きの幅を、VIX指数(恐怖指数)で相場の温度感を読む。資産が生活費の10倍を超えるころから、損益通算のような税の扱いが目に見える費用になる。取り崩しが近づくと、増やすより減らさないことが課題に変わり、取り崩しを始めた直後の下落が後まで響く。数年分の生活費を値動きの小さい資産に置き、下げた年に株式を売らずに済むようにする組み方がある(ヤン)。
やりがちな失敗は、いまの段を飛ばして先の段の技術に手を出すことだ。借入が残るうちに税の工夫を調べても、積み立ての土台が固まる前に会社の数字を読み込んでも、結果を動かすのは別の要素になる。いまの段でやることを1つ決め、それが済んでから次の段の数字に進む。
