ファーム(マークスマン)は、ティア表がいちばんアテにならないレーンだと思っています。「使っている人が多い=強い」という読み方が、この役割ではとくに裏切られやすいからです。マークスマンは紙のように脆いスペック火力で、味方に守ってもらい、自分でも位置を取り直し続けて、ようやく終盤に火力を出せるようになる。その前提が崩れれば、どれだけ使用率の高い“人気の一体”でもあっさり溶けます。だから使用率は「強さ」ではなく「憧れ」に近い数字です。この記事では配信者のティア表とアプリの勝率・使用率、そして各ヒーローの実データを突き合わせて、「守ってもらえる編成か」「自分で自衛できるか」という物差しで選び直していきます。
マークスマンの使用率は「強さ」ではなく「憧れ」を映す
まず役割の前提を押さえておきたいです。各ヒーローの実データを並べて読むと、書いてあることが驚くほど同じでした。伽羅も仁傑もマルコ・ポーロも魯班7号も、序盤の指針は「サポートの後ろで安全にファームし、レーン戦を生き延びる」。中盤は「クールダウン短縮とマナ回復が揃って牽制を繰り返せるようになる」。終盤は「フルビルドが揃えば長引く戦いほど有利になる」。立ち回りの注意点にいたっては、全員が判で押したように「前衛の後ろに位置取り、飛び込みに備えてフラッシュを温存し、自分から戦いを探しに行くのではなくサポートに視界を取らせ、川で単独で捕まらない」と書いてあります。
つまりマークスマンというのは、誰を握っても勝ち筋の骨格が「守ってもらって、終盤まで生き延びて、そこから火力を出す」でできている役割です。序盤は守られる存在で、コアアイテムが揃う前に試合が決まってしまえば出番すら来ない。裏を返せば、護衛と位置取りという前提さえ崩れれば、スペック上どれだけ強い一体でも仕事をしないうちに退場します。
だから使用率という数字は、「勝てる一体」ではなく「握ってみたい一体」を映しているにすぎません。派手なコンボや高い天井に憧れて選ばれた回数が、そのまま使用率になる。実際に前提が噛み合って勝てたかどうかは、勝率のほうに出ます。この二つを別々の物差しとして読むのが、マークスマン選びの出発点です。
配信者の評価と、勝率・使用率のズレ
配信者の評価に勝率・使用率を並べると、そのズレがはっきり見えてきます。
| ヒーロー | さいとう | Youmuus | 勝率 | 使用率 |
|---|---|---|---|---|
| 蒙牙 | D | — | 53.4% | 0.44% |
| 魯班7号 | A | C | 53.2% | 2.11% |
| 伽羅 | S | — | 53.0% | 1.17% |
| マルコ・ポーロ | S | S | 49.0% | 1.98% |
| 白龍 | S | — | 48.2% | 1.37% |
| 仁傑 | S | A | 51.1% | 0.77% |
| エリン | A | S | 51.2% | 1.50% |
| 后羿 | B | A | 49.2% | 2.45% |
(さいとう=ソロランク基準/Youmuus=ピーク基準)
いちばん極端なのが表の上下です。勝率トップの53.4%を出している蒙牙は、使用率が0.44%と最下位。ほとんど誰も握っていないのに、握った試合ではいちばん勝っています。逆に、使用率トップの2.45%を集める后羿は、勝率が49.2%と平均以下。最も使われているマークスマンが、最も勝てていない側にいるわけです。「みんなが使っているから強いはず」という直感が、この二体だけでもう裏返っています。蒙牙は配信者評価がD、しかも使用率がここまで薄いので「隠れ最強だから今すぐ握れ」と煽れる数字ではありませんが、それでも「人気と強さは別物」という事実の、これ以上ない証拠にはなっています。
もうひとつ見てほしいのが、さいとう氏がS評価をつけた四体です。伽羅・仁傑・白龍・マルコ・ポーロという、彼が“低レートマークスマン四天皇”と呼ぶ顔ぶれですが、この同じS評価の中で勝率がきれいに二分されます。伽羅53.0%・仁傑51.1%は50%を超え、白龍48.2%・マルコ49.0%は50%を割る。配信者のティア評価は「上手く使えたときの天井」を測っていて、勝率は「多くの人が握ったときの床」を映している。天井が高いことと、平均的に勝てることは、まったく別の話なのだとこの四体が教えてくれます。以下、この読み方でズレの大きい順に一体ずつ見ていきます。
使用率トップの罠、后羿
后羿は、この記事の主役といっていい一体です。使用率2.45%はファーム最多、なのに勝率は49.2%と平均以下。人気と勝率がここまで噛み合わない例はそう多くありません。
強みははっきりしています。スキル2「灼熱の矢」でスタンとスロウを撒き、味方の火力役にキルの好機を作れる起点役で、アプリ内の総合評価も「強い」。奥義が回り始めると灼熱の矢のCC時間が伸び、一発当てるだけでチーム戦が雪だるま式に有利になります。仕掛けの号砲を鳴らせるマークスマンというのは、それだけで魅力的に見えます。
ところが、その魅力がそのまま罠になります。実データが真っ先に挙げる失敗が「スキル2を後衛の火力役に取っておかず、前線のタンクに当ててしまうこと」。せっかくのCCを硬いタンクに吐いてしまえば、后羿の唯一の武器は火力に繋がりません。狙うべき相手を見極める判断がそのまま勝率に出る設計で、平均的なプレイヤーが握ると「起点を作れるはずのCC」が空振りし続ける。使用率の高さは、この起点役としての華やかさに憧れて握った回数であって、当てきれた回数ではないわけです。
しかも后羿には自衛の機動力がありません。ダッシュも無敵もなく、飛び込まれれば位置を取り直す手段が乏しいので、護衛への依存度は最大級です。選ぶべきなのは、味方に起点を活かす火力役がいて、相手が雲中君・ムーラン・百里玄策のように后羿が削りやすい面々のとき。逆に避けたいのは、相手が浄化・ダッシュ・無敵でCCをすり抜けてくる編成、序盤で試合が決してしまう展開、そしてアグドがすでにドラフトされているときです。アグドは相性データ上、后羿への直接の回答役とされていて、仕掛けるタイミングは相手アグドのクールダウンを見てから決めなければなりません。「使用率トップだから安牌」と思って握ると、この前提の多さに足をすくわれます。
S評価でも握ると溶ける二体、マルコ・ポーロと白龍
先ほどの“四天皇”の勝率が割れた側、
マルコ・ポーロと
白龍は、憧れて握ると溶ける典型です。二体ともさいとう氏はS(マルコはYoumuus氏もS)、アプリの総合評価も「強い」。それでいて勝率はマルコ49.0%、白龍48.2%と揃って50%割れ。評価と結果のこのギャップこそ、天井の高さと床の低さの差です。
マルコ・ポーロはトップクラスのファーム型で、安全な遠距離スキルで空間を支配するのが持ち味です。使用率1.98%と人気も高い。ただ、その空間支配は相手を選びます。廉頗・劉邦・張飛は相性データ上マルコへの直接的な対策とされ、これらがいる盤面では持ち味の間合いを潰されます。仕掛けるときに相手の廉頗・劉邦を無視することが失敗として名指しされているとおり、彼らのクールダウンを数えながら動く緻密さが要る。自衛の手段としてスキル2という立て直しの引き出しはありますが、それを含めて操作の精度がそのまま勝敗に出るので、平均勝率が伸びにくいわけです。選ぶなら、相手が飛び込み構成で仕掛け前に牽制する空間があり、廉頗のような直接の対策を軸にしていない盤面。味方に達磨や劉禅がいれば、彼らの仕掛けの隙に合わせて二段目を差し込めます。
白龍はさらにクセが強い一体です。コンボから一気に大ダメージを叩き込む瞬間火力型で、奥義「夢玄龍」で空へ舞い上がってから急降下し、狙った相手に飛び込んで主導権を握る。ここが要注意で、この奥義は「逃げ」ではなく「飛び込み」です。つまり白龍は自分から前に出ていく設計で、他のマークスマン以上に位置取りと護衛の前提がシビアになります。失敗として挙がるのも、夢玄龍を後衛の火力役に取っておかず前衛タンクに使ってしまうこと。狙いを外せば、脆い身体で敵陣に突っ込んだだけで終わります。カウンターも厳しく、回復軽減を積まれると持続力が消え、そしてなんと同じマークスマンの伽羅が白龍への直接の対策として名指しされています。仕掛けるタイミングを相手伽羅のクールダウンに合わせろ、とまで書かれているほどです。味方に白龍のダメージを守り切れて、追撃でキルまで詰めてくれる編成があり、相手に白龍を執拗に狙う飛び込みが少ない。その条件が揃ってはじめて、S評価どおりの一体になります。
この二体は「弱い」のではありません。前提が揃えば配信者評価どおりに強い。ただ、その前提と操作精度を用意できないまま憧れで握ると、勝率どおりに溶けます。
人気で、しかも本当に勝っている、魯班7号
同じ「使用率が高い」でも、
魯班7号は后羿と正反対の意味を持ちます。使用率2.11%とファーム最多クラス、そのうえ勝率53.2%と表の上位。人気と結果がちゃんと噛み合っている、数少ない一体です。
面白いのは配信者評価の割れ方で、さいとう氏はA、Youmuus氏はCと辛口です。上級者ほど「奥義が弱い」と敬遠しがちなヒーローなのに、実際の勝率は表で二番目に高い。上手い人は物足りなく感じるけれど、多くのプレイヤーが握ると素直に勝てている。「上級者の評価」と「みんなの勝率」がズレる好例です。
なぜ勝てているか。魯班7号は火力の伸びる標準的なファーム型で、スパークダガーから速攻の靴・エンドレスブレード・天貫の弓とつなぐ王道ビルド、アルカナは紅月・鷹の目・略奪と、道筋に迷いがありません。やることが素直な遠距離牽制で、奇をてらった判断を要求されないぶん、床が高いのです。ただし裏側では、魯班7号は機動力を持たない完全な護衛前提のヒーローで、近距離戦を強いられれば持ち味を失います。裏を返せば、この勝率は「守られる立ち回りさえ守れば素直に火力が出る」ことの証明でもある。CC起点の判断力を要求される后羿とは、そこが決定的に違います。選ぶ目安は、目標を攻める場面で遠距離から守り手を削りたいチームで、相手にユンエイ・橘右京・瀾のように削りやすい面々がいるとき。苦手は廉頗で、直接の対策として噛み合うため、仕掛けは廉頗のクールダウンを見てから。初心者が「人気だから」と魯班7号を握るのは、むしろ堂々と正解です。
迷ったらここから、伽羅・仁傑・エリン
“四天皇”の勝率が超えた側が、
伽羅と
仁傑です。ここに
エリンを加えた三体が、前提の少なさで選べる本命だと考えています。
伽羅はバランス型で、通常攻撃を強化して届かない距離から撃ち続けるのが仕事です。さいとうS、勝率53.0%。長い射程と位置を取り直すスキルがあるぶん、脆いマークスマンの中では自衛の余地がある側で、操作も素直。しかも先ほど触れたとおり、白龍への直接の対策として名前が挙がるほど、機動力で飛び込んでくる相手を咎めやすい。相性データでもナコルル・百里玄策・李白に圧力をかけられる面々として挙がっています。選ぶ条件は、敵が飛び込み構成で仕掛け前に牽制する空間があり、伽羅が育つ時間帯を相手のマッチアップが奪わないとき。味方に劉禅や廉頗がいれば、彼らの仕掛けに合わせて二の手を入れられます。避けるべきは、牽制を突き抜けて一気に距離を詰めてくる強引な仕掛けや、序盤で試合が終わる展開です。
仁傑は伽羅と同じ遠距離牽制型で、勝率51.1%とこちらも50%超え。さいとうS、Youmuus A。にもかかわらず使用率は0.77%と低く、実力に対して過小評価されている“隠れた良品”です。不知火舞・橘右京・ユンエイに強く、達磨・呂布・張飛と組めば起点に合わせて削っていける。素直に扱えて勝率も出るのに人気がない、つまり使用率という数字がいかに実力と無関係かを、仁傑は逆側から証明しています。
エリンはさいとうA・YoumuusS、勝率51.2%。継続的な回復を活かして長い撃ち合いに勝つ消耗戦タイプで、ライフスティールが揃う中盤から、回復とダメージが噛み合って撃ち合いの構図が互角から有利へ反転します。スタックを貯めれば当てやすく、扱いやすさで初心者に向く一体。ただし明確な弱点があって、夏侯惇のような回復カットを積まれると持ち味の回復がほぼ無効化されます。相手がいつ回復カットを買うかを見て積極性を調整する、という一点だけは意識が要る。瞬間火力で押し切りたい試合や、飛び込み・アサシンが多くて自由に撃てない盤面も苦手です。裏返せば、消耗戦に持ち込める編成と、回復を止めてくる駒がいない盤面なら、素直に強く出られます。
結論、使用率ではなく「守られる編成か・自衛できるか」で選ぶ
配信者のティアを、勝率と「守ってもらえる編成か・自分で自衛できるか」で並べ直すと、この記事の見立てはこうなります。
| ティア | ヒーロー | この記事での位置づけ |
|---|---|---|
| S|迷わず握れる本命 | 伽羅/仁傑/エリン | 前提が少なく勝率も50%超え。操作が素直で扱いやすい |
| A|人気で、しかも実際に勝てている | 魯班7号 | 完全な護衛前提だが、守りの立ち回りさえ守れば素直に火力が出る |
| B|前提と操作を用意できてから | マルコ・ポーロ/白龍 | 配信者S評価でも勝率は50%割れ。天井は高いが床が低く、操作精度がそのまま出る |
| 注意|使用率に釣られて握らない | 后羿 | ファーム最多の人気でも勝率は平均以下。CCを当てきる判断が要る |
| 参考|データが薄く判断保留 | 蒙牙 | 勝率トップだが使用率は最下位・配信者D。「今すぐ握れ」とは言えない外れ値 |
一本通して見えてくるのは、マークスマンの強さが本体スペックではなく前提の充足で決まる、ということです。使用率トップの后羿が勝率で沈み、使用率最下位の蒙牙が勝率で光り、同じ配信者S評価の四天皇が勝率で真っ二つに割れる。この全部が、「使用率=強さ」という読み方を否定しています。憧れの一体を使用率に釣られて握ると溶けるのは、脆い火力役が護衛と位置取りという前提の上でしか機能しないからです。
だから選ぶときの物差しは、ヒーローの人気ではなく二つの問いに置き換えてください。ひとつは「守ってもらえる編成か」。味方に前衛や起点役、キルまで詰める追撃役がいて、序盤で試合が終わらず終盤まで生かしてもらえるか。もうひとつは「自分で自衛できるか」。長い射程や立て直しの引き出しがあるか、無いならその一体は護衛依存度が跳ね上がります。魯班7号・后羿・エリンは自衛の機動力をほぼ持たない護衛依存の最たる存在で、伽羅・仁傑は長射程と位置直しでいくらかマシ、白龍・マルコは立て直しの手段こそあれ操作精度がそのまま床の低さに直結します。
- 迷わず握れる本命 →
伽羅・
仁傑・
エリン(前提が少なく、勝率も50%超え) - 人気で、しかも実際に勝てている →
魯班7号(守りの立ち回りを守れば素直に火力が出る) - 前提と操作を用意できてから →
マルコ・ポーロ・
白龍(配信者S評価だが勝率50%割れ、天井は高いが床が低い) - 使用率に釣られて握らない →
后羿(ファーム最多の人気だが勝率は平均以下、CCを当てきる判断が要る)
憧れは、前提が揃った盤面まで取っておく。その一手が、ソロランクのマークスマンでいちばん勝率を動かします。
参考にしたティア表:HoKさいとう(ソロランク基準)/ Phil・Youmuus(ピーク基準)。内容は自分の言葉で再構成しています。勝率・使用率はオトモリンバオ(グローバル版準拠)より。